大企業だけではなく中小企業からの注目度も高まっているオウンドメディア。競争激化によってWeb広告の費用対効果が低下しつつある昨今、オウンドメディアは新たな集客手段として需要が上昇しています。
ただ、オウンドメディアには自社サイトや複数のコンテンツが必要になるため、「始め方のイメージが湧かない」というケースも珍しくありません。
そこで本記事では、オウンドメディアの始め方について6つのステップ別に解説を行います。さらに記事の後半では、オウンドメディアを運営するうえで必要な体制整備の方法も解説します。
オウンドメディアの始め方・導入方法
オウンドメディアを始めるには、以下のように6つの手順に沿って準備を進めていきます。
- 最終的な目的を定める
- メディアコンセプトを策定する
- ターゲットからペルソナを想定する
- コンテンツ制作に必要なマップを作る
- 運用に必要な体制を整える
- オウンドメディアを構築する
オウンドメディアを構築する前に上記の始め方を理解しておくと、導入がスムーズです。以下でより詳しく解説しているため、これからオウンドメディアを構築したい人は参考にしてください。
オウンドメディアの始め方①最終的な目的を定める
オウンドメディアを立ち上げる際にもっとも重要となるのが、運用の目的です。集客やブランディング、採用効率の上昇などオウンドメディアは実に多彩な使い方ができるため、あらかじめ目的を明確にしておくと「どのようなコンテンツを提供するか」という軸がはっきりとします。
では、オウンドメディアを始めるにあたってどのような目的を設定できるのか、以下でその一例をご紹介します。
- 集客チャネルを拡充し、ECサイトや実店舗への来店客数を増やしたい
- ランディングページに至る新たなチャネルポイントを確立し、広告費を削減
- 自社のブランドや商品、サービスの認知拡大あるいは印象を良くしたい
- BtoBビジネスにおいて見込み客とのつながりを強化し受注確度を高めたい
- 求職者向けに自社の魅力をPRし採用効率を上昇させたい
このように目的を明確にすることは、次の項目でお伝えするメディアコンセプトの策定にも大きくかかわってきます。そのため、「オウンドメディアを立ち上げて何を成し遂げたいのか」という点をはっきりとしておきましょう。
オウンドメディアの始め方②メディアコンセプトを策定する
次に、オウンドメディアで提供するコンテンツの核となるコンセプトを決めます。先ほど決めた目的に基づき、「誰にどのような情報を提供するのか」という点を明確にしていきましょう。なお、詳細なターゲットやコンテンツの内容は後ほど決めるため、この段階ではある程度幅の広いコンセプトで構いません。
メディアコンセプトの一例として以下のような内容を考えることができます。
- 第二新卒の転職のお悩み解決ブログ
- 営業マンに向けた営業成績をアップするためのハウツーメディア
- 「どれを選んでよいか分からない」を解消する、あらゆる商品の選び方ガイド
オウンドメディアで集客を行うためにはSEOの知識が欠かせません。SEOを実施する際、検索エンジンで上位表示を獲得するためには専門性や権威性を踏まえた情報提供が必要です。そのため、メディアコンセプトを考えるときは、自社の専門性を発揮できるテーマや分野を選ぶと良いでしょう。
オウンドメディアの始め方③ターゲットからペルソナを想定する
目的とコンセプトが明確になった後は、より具体的に「誰に情報を提供するのか」という点を考えていきます。このターゲット情報を詳細に絞り込むことを「ペルソナ」と言います。
たとえば、ターゲットを「20代男性」に設定した場合、同じ年代の男性には多種多様な考え方や趣味嗜好を持った人がいるため、ニーズを明確に絞り込むことができません。そこで、性別や年齢のほか、職業、居住地、趣味といった細かいユーザー属性の設定が必要になります。
以下にペルソナの一例を挙げてみましたので参考にしてみてください。
ペルソナの要素 | ペルソナの例 |
氏名(年齢) | 細川 健一(26) |
業種 | ITソフトウェア |
勤め先 | 都内IT企業、売上規模20億円、従業員50名 |
居住地・家族構成 | 東京都千代田区、一人暮らし |
最終学歴 | 都内私立大学 情報学科卒業 |
経歴 | 大学時代にアルバイトをしていたIT企業が気に入り、大学を卒業後にその企業へ就職。入社当時は営業部に配属され、自社ソフトウェアの提案や販売活動に加わる。自ら積極的に上司や先輩から知識を習得し、入社から1年を経ずしてソフトウェアのデモを行えるようになった。その後、会社の事業拡大のため営業推進部を発足することになったが、その新規性に興味をそそられ立候補、部署に就くことになる。 |
現在抱えている悩み | 新たに発足した営業推進部での仕事がスタートしたが、営業経験しかないこともありマーケティング業務に関する知識がほとんどない。会社としてもいままでは一部の営業部門がマーケティング業務を肩代わりしていたため、専門的な知見に長ける上司や先輩が少ない。「自ら知識や技術を習得できるメディアがあれば……」というニーズを抱えている。 |
よく使用するオンラインツール | 時間のあるときにオンラインセミナーに参加しており、その際はLINEやFacebookなどを活用している。気になるニュースについてはRSSから情報を取得している。 |
オウンドメディアの始め方④コンテンツ制作に必要なマップを作る
次に、コンテンツ制作の際に役立つマップを作成していきます。オウンドメディアでよく用いられるマップには以下のような種類があります。
- カスタマージャーニーマップ
- キーワードマップ
- コンテンツマップ
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップとは、「認知→興味関心→比較検討→購入→リピート」の購買プロセスごとにユーザーの行動や思考などを図式化したものです。ユーザーが各プロセスで抱える課題の発見やニーズに合った戦略を策定するときに役立ちます。
たとえば、「化粧水に興味がある20代の女性」をターゲットにする場合、カスタマージャーニーマップは以下のように設定できます。
購買プロセス | 認知 | 興味関心 | 比較検討 | 購入 | リピート |
行動 | テレビCMやWeb広告で商品の存在を知る | Web検索で自分の肌年齢や自身に合う化粧水を知ろうとする | 比較サイトや口コミサイトを参考に、複数の化粧水を比較 | ECサイトや企業の公式サイトで詳細を知り、購入を検討 | 気に入った同じ商品を購入、またはほかの人に勧める |
思考 | こんな化粧水があるなんて知らなかった | ひとまず化粧水についていろいろな情報を探してみよう | どの化粧水が自分に合うか、複数の商品を比べてみよう | 効果が出るか楽しみ | 期待していた効果が得られたから、もう一度購入したい |
チャネル | ・テレビ ・YouTube ・SNS ・Web広告 | ・Webサイト ・YouTube | ・Webサイト ・口コミ | ・Webサイト ・ECサイト | ・Webサイト ・ECサイト ・SNS |
課題 | 化粧水にはどんな種類がある? | どれが自分に合うのか分からない | 具体的な効果や価格は? | 本当に効果が出るのかな? | いま使っているものより良いものがあるかも |
戦略 | 広告配信による認知拡大 | 競合他社も含めた比較コンテンツ作成 | 強みやベネフィットが分かるLP作成 | 返金保証制度をアピール | ハイエンドシリーズの紹介 |
カスタマージャーニーマップを作成するメリットは、ユーザーとのタッチポイントが明確になることです。オウンドメディアではユーザーのニーズに合ったコンテンツの提供が必要になるため、カスタマージャーニーマップがあると購買プロセスごとのニーズを把握しやすくなります。
キーワードマップ
キーワードマップとは、ある検索キーワードの関連ワードを視覚的に表したものです。コンテンツを制作する際のテーマ策定を行うときに役立ちます。
オウンドメディアの主な流入元は検索エンジンです。そのため、ユーザーのニーズを把握するために検索キーワードを分析し、そこから各コンテンツへと落とし込んでいきます。その際、キーワードマップを活用することで、効率的にキーワードの調査を行うことが可能です。
たとえば「ハワイ」という検索キーワードを基にすると、「観光」や「お土産」、「旅行」といった複数の関連ワードを抽出できるでしょう。これを視覚的にまとめたものがキーワードマップです。
キーワードマップを作る場合は、専用のツールを利用するほうが効率良く作成できます。また、コンテンツマップ専用のツールと組み合わせ、キーワードとコンテンツを同時に管理する方法もあります。
コンテンツマップ
コンテンツマップとは、オウンドメディア内のコンテンツの全体像を視覚的にまとめたものです。マップによってコンテンツの全体像を把握すると、それぞれの記事に優先順位を付け、メディア全体の費用対効果を高められます。
コンテンツマップの形は先述したキーワードマップとほとんど変わりません。そのため、取得した複数のキーワードをマップ作成ツールで可視化し、それらのキーワードに絡めてコンテンツマップを作成することもできます。
たとえば「ハワイ」というテーマから「ハワイ 旅行」や「ハワイ ビジネスクラス」などのキーワードを取得した場合、それぞれ以下のようにコンテンツの内容を考えられます。
- テーマ:ハワイ
- KW①ハワイ 旅行:ハワイ旅行のおすすめプラン10選
- KW②ハワイ ビジネスクラス:機内食や座席による違い、料金などを解説
上記のように各キーワードからコンテンツの概要を考え、キーワードマップに連なるようにコンテンツマップを作っていきます。オウンドメディアを開設する前にコンテンツマップを作っておくことで、スムーズなコンテンツ制作が可能です。
オウンドメディアの始め方⑤運用に必要な体制を整える
マップ作製によってコンテンツの方向性を固めた後は、オウンドメディアの運用体制を整えていきましょう。オウンドメディアの運用には、コンテンツを作るための人材確保やスケジュールの策定、運用形態の決定といった準備が必要です。体制整備は行うべきことが多いため、後ほど詳しく解説します。
オウンドメディアの始め方⑥オウンドメディアを構築する
次は、いよいよオウンドメディアを立ち上げます。
サイトを作成するにあたり、もっともおすすめなのがCMS(コンテンツマネジメントシステム)を活用する方法です。オウンドメディアは無料ブログサービスで作成することもできますが、CMSを使うほうがSEOに強く、集客やブランディングで高い効果を期待できます。
なかでも「WordPress(ワードプレス)」は、数あるCMSのなかでもっとも有名です。また、数多くのレンタルサーバーがWordPressに対応しており、初心者の方でも簡単にオウンドメディアを構築できるメリットがあります。
オウンドメディアの運用に必要な体制
オウンドメディアの始め方⑤にて、運用体制の整備について簡単にご紹介しました。ここでは、オウンドメディアの運用に必要な体制について、より詳しく解説します。
オウンドメディアの運用体制を整備するには、以下3つの準備が必要です。
- オウンドメディアの運用形態を決める
- オウンドメディア運営に必要な人材を揃える
- 運用スケジュールを確立する
オウンドメディアの運用形態を決める
最初に決めなければならないことは、オウンドメディアの運用形態です。オウンドメディアの運用形態は、「内製化」と「外部委託」の2種類に分かれます。
内製化の場合、記事の制作からメディア運用、効果測定・改善などの業務をすべて自社で行います。オウンドメディア運営のノウハウを蓄積でき、柔軟にコンテンツの変更や修正に対応できるのがメリットです。
外部委託の場合、記事の制作だけフリーランスに業務委託したり、効果検証やコンテンツの改善の部分のみを専門会社に依頼したりなどさまざまな方法を採用できます。社内に必要なリソースが不足する場合でもコンテンツを制作できるのがメリットです。
オウンドメディア運営に必要な人材を揃える
オウンドメディア運営に必要な人材は以下の通りです。
- ディレクター:記事のコンセプトやテーマ決定、メンバーへのアナウンスなどを行う
- 構成担当者:記事のテーマを基にコンテンツの骨組みとなる構成を作成
- ライター:構成に基づいて情報を調べ記事を執筆、構成まで担当することもある
- イラストレーター:画像や動画に含める素材などを作成
- 編集者:執筆した記事の校正や校閲、修正依頼、記事の投稿などを行う
- アナリスト:投稿した記事の経過分析、内容改善のための計画立案などを行う
なお、オウンドメディアの規模や予算によっては、ディレクターが編集者を兼任、またはライターが構成や記事の投稿など幅広く業務を行うこともあります。コンテンツの制作フローを明確にしたうえで必要な人材を揃えるようにしましょう。
運用スケジュールを確立する
最後に、オウンドメディアの運用スケジュールを決定します。たとえば、1ヶ月ごとの記事の投稿数や効果測定を行う期間などです。また、外部の専門人材を活用する場合、他社の仕事を抱えているケースもあるため、1ヶ月の制作可能本数や契約期間といったスケジュールも加味しておくと良いでしょう。
弊社ではオウンドメディアの導入から運用まで支援しています。ぜひお問い合わせください。