オウンドメディアとは、主に企業や団体が運営する情報発信用のWebサイトです。よくあるコーポレートサイトや社員ブログといった形ではなく、ユーザーのニーズや悩み、課題などに対してピンポイントに必要な情報を発信する点に特徴があります。
飲食店の場合、ホームページや口コミサイト、Web広告、Googleマイビジネス(ローカル検索)を利用して集客を行うことも多いでしょう。こうした数あるチャネルのなかで、オウンドメディアは集客とブランディングを同時にできるメリットを備えています。
本記事では、飲食店向けのオウンドメディアの活用方法や事例などを解説します。
飲食店経営の一番の悩みは「集客」
オウンドメディアと言えば、インターネットやWebサービスに精通したIT企業が使うものだとイメージする方も多いかもしれません。しかし、オウンドメディアを活用する業種は幅広く、飲食店におけるマーケティングでもその重要性が高まりつつあります。
その理由は、オウンドメディアを運営することで集客につながるからです。
飲食店.COMの飲食店リサーチによると、「飲食店経営における悩み」という質問に対し「集客」と答えた割合は77.3%で第1位となりました。そのうち集客に悩んでいる黒字店は68.3%ですが、赤字店に限っては98.1%が「集客」だと回答しています。
参考:飲食店.COM(株式会社シンクロ・フード)調べ
また、飲食店向けの予約システムなどを開発するTableCheckの消費者への調査では、「飲食店を検索する際の情報収集の手段」という質問に対し「Google検索」と回答した割合は48.3%でした。これは78.9%のグルメサイトに次いで2位の結果となっており、飲食店はいかにインターネットを活用して集客をはかるかという点が課題だと言えるでしょう。
参考:グルメサイトに関する消費者意識調査
引用元:TableCheck
インターネットを活用して集客をはかろうとする際、もっとも頭に浮かびやすい施策がWeb広告です。リスティング広告やディスプレイ広告を活用すれば、自店の魅力を多数の消費者に伝えられます。
ただ、一度でもWeb広告を出稿した経験がある方なら、「広告は競争が激しく十分な予算が確保できない」「一時的な集客効果は高いものの持続しない」と感じているかもしれません。予算さえあれば誰でも簡単にできるWeb広告は過当競争が進み、現在は出稿単価が高騰しています。
そこで代わりの集客手段として考えられるのが、オウンドメディアを活用したマーケティングです。オウンドメディアの構築や運用にも費用がかかりますが、活用方法次第ではWeb広告よりも高い費用対効果が期待できます。また、単発の施策で終始しがちな広告とは異なり、オウンドメディアでは持続的な集客効果が生まれます。
飲食店がオウンドメディア運営を行うメリット
飲食店がオウンドメディア運営を行うメリットは以下の通りです。
- 広告費用をかけずに長期間の集客効果が期待できる
- 広告にはない自由なフォーマットで自店をアピールできる
- 口コミサイトやGoogleマイビジネスとの親和性が高い
- 集客以外にもさまざまな目的に対応
- 採用活動にも効果を発揮する
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
広告費用をかけずに長期間の集客効果が期待できる
オウンドメディアでは、SEO対策を実施することで長期的な集客効果が期待できます。SEO対策とは、「ラーメン 新宿」や「近くの美味しいお店」といった検索キーワードごとに適切なコンテンツ(記事)を用意し、意図的に検索結果の上位をとることでユーザーのアクセスを獲得する方法です。
Webサイトや店舗への集客をはかるだけなら広告でもできますが、長期的な集客効果は期待できません。
たとえばCPC単価のリスティング広告を出稿する際、仮に上限クリック単価を50円に設定すると、1万人のアクセスを獲得するためには50万円の費用が必要です。ただし1万人のアクセスを獲得したからといって、そのすべてが自店を訪れてくれるとは限りません。そのため、50万円の予算を投じて何度も広告を出し続けるうちに、広告費、運用費が500万円、600万円と高額になってしまいます。
オウンドメディアを運営する場合でもサイトの構築費と運用費が必要です。しかし構築費は少額なら20~30万円程度に抑えられ、メディア運営が軌道に乗ってくると運用費も月15万~40万円ほどで済みます。
さらにオウンドメディアの場合、たとえば「健康食 レシピ」の検索キーワードで自社サイトへのアクセスを獲得した後、数週間経って今度は「体に良い食材 一覧」というキーワードで同じユーザーがサイトにアクセスしてくれる可能性があります。同じユーザーに何度もアクセスしてもらうことで、「いつも美味しそうなレシピを載せているし、一度店に行ってみようかな」という気持ちにさせることもできるでしょう。
広告にはない自由なフォーマットで自店をアピールできる
オウンドメディアで情報を発信する場合、アイデア次第で自由なフォーマットのコンテンツを提供できます。広告の場合だと、テキストやサムネイルといった一部の要素しか変更できず自由性に欠けますが、オウンドメディアでは表現方法が自由です。
たとえば、「仕入担当者を密着取材」というコンテンツを用意し、仕入担当者が普段どのような食材を仕入れているか、お客様に美味しく召し上がってもらうためにどのような工夫を行っているかといった情報を掲載できます。同時に「生産者の声」を紹介することで、「この店は食材にこだわっているんだな」という印象をユーザーに与えられるでしょう。
ほかにも自店に在籍するシェフの腕前を披露するため、「プロが教える○○のレシピ動画」といったコンテンツもユニークです。レシピ情報と動画をオウンドメディアに掲載し、それをさらにYouTubeアカウントと連動させれば、一大グルメサイトが完成します。たとえば「晩ご飯の作り方」というユーザーのニーズを獲得すれば、広告に頼ることなく高い集客効果が期待できます。
もちろんオウンドメディア内で自店の魅力や店舗紹介、来店するメリットなどを大々的に発信することも可能です。ただ、宣伝文句ばかりのサイトはユーザーが敬遠しやすい傾向にあるため、検索キーワード分析でユーザーのニーズを深掘りし、「価値がある」「興味がある」と思ってもらえるようなコンテンツを提供するようにしましょう。
口コミサイトやGoogleマイビジネスとの親和性が高い
飲食店にとって口コミサイトやGoogleマイビジネスは欠かせないチャネルですが、そうしたチャネルとオウンドメディアは相性が抜群です。
口コミサイトやGoogleマイビジネスには、自社サイトのURLを貼り付けることができます。そのURLにオウンドメディアを指定しておくことで、ユーザーとの新たな関係の構築につながります。
口コミサイトには「食べログ」や「Retty」といった代表的なサービスが存在します。こうした大手口コミサイトは、「飲食店 口コミ」といったキーワードで検索すると上位に表示されるため、各サイトの集客力を活用することが可能です。また、GoogleマイビジネスではMEO(マップエンジン最適化)という施策で集客効果を高められます。
つまり、口コミサイトとGoogleマイビジネス、オウンドメディアの3つの施策を活用することで、自店に関する情報の露出機会を増やし、さまざまなチャネルからアクセスを獲得できるようになるということです。
集客以外にもさまざまな目的に対応
ここまで特にオウンドメディアの集客効果のメリットをお伝えしましたが、集客以外にもさまざまな目的に対応できる利点もあります。飲食店のイメージ訴求や認知拡大につながるブランディングはもちろん、広報やフランチャイジー募集といった役割も果たします。
ただし、オウンドメディアを運営する目的は1つに絞るようにしましょう。1つのオウンドメディアに複数の目的を設定してしまうと、コンテンツが膨大になった結果求めている情報が探しにくくなり、オウンドメディアとしての機能を果たさなくなるからです。
採用活動にも効果を発揮する
アイデア次第で自由なフォーマットを表現できるオウンドメディアでは、採用情報に特化したコンテンツを作成することも難しくありません。求職者も立場が変われば1人の消費者なので、まずはお客様として自店が提供するコンテンツに興味を持ってもらい、そこから採用活動につなげる方法も効果的です。
飲食店のオウンドメディア活用事例
最近では、オウンドメディアのメリットに着目する企業も増えてきました。ここでご紹介する事例は、飲食店としてオウンドメディアをマーケティングに活用して成功した企業ばかりです。さまざまなオウンドメディアの活用方法を知り、自店のメディア運営に生かしてみてください。
事例①TERIYAKI
TERIYAKIは、飲食店検索サービスです。同じサービスには口コミサイトである食べログやRettyといったものがありますが、サイト上で行われる評価とその店の料理の美味しさは必ずしも合致していません。そこで堀江氏は、「本当に美味しいお店を紹介する」というコンセプトで同サイトを立ち上げました。
TERIYAKIのなかではコラムが紹介されており、飲食店検索サイトでありながらオウンドメディアとしての機能しています。このコラムでは、美味しい料理を探すプロのグルメ家であるテリヤキストと呼ばれる集団が、国内外の絶品料理を紹介しています。
たとえば飲食店の場合だと、さまざまな絶品料理を紹介するなかで自店の料理紹介も織り交ぜるといった発信が可能です。飲食店向けのコンテンツを制作する際には、大いに参考になることでしょう。
【TERIYAKI】
https://teriyaki.me/
事例②FOOD PORT.
FOOD PORT.は、株式会社ドリームスタジオが運営するオウンドメディアです。
「FROM JAPAN」や「GIFT」など5つのジャンルを基に、全国の美味しい飲食店を紹介しています。ほかにもシェフが直々に伝える本格派レシピの紹介や穴場スポットの解説など、グルメ好きが楽しめる豊富なコンテンツを用意している点が特徴です。
また、FOOD PORT.では、サイトを長く利用してもらう工夫が施されています。たとえばFOOD PORT.のメルマガに登録すると、瀬戸内でとれた美味しい食材が当たる抽選に参加できます。さらに定期的に配信されるメールでユーザーとコミュニケーションがとれるため、オウンドメディアの利点をうまく活用した事例だと言えるでしょう。
【FOOD PORT.】
https://foodport.jp/
事例③NOMOOO
NOMOOOは、酒類の販売を行うリカーイノベーションが運営するオウンドメディアです。同時に居酒屋の経営も行っており、お酒に関してはスペシャリストだと言えます。
そのため、オウンドメディアで扱っている情報のほとんどがお酒に関するもの。新商品やおつまみのレシピのほか、飲酒に関する正しい知識や美味しく召し上がる方法といった専門的な情報も掲載されています。「お酒」という特定のジャンルに絞り込むことで、お酒好きの特定ユーザーの心をわしづかみにします。
また、ユーザーがメディアを回遊しているうちに「近くのお店で少し飲みたいな」と思った場合、同社が運営するKURANDという予約フォームが掲載されているため、すぐに近くの店舗で飲食を楽しむことができます。自店への集客にうまく結びつけている点は、メディアを作る際に参考になるはずです。
【NOMOOO】
https://www.nomooo.jp/
事例④サントリーカクテルレシピ
サントリーカクテルレシピは、サントリーホールディングス株式会社が運営するオウンドメディアです。サイトの検索機能を使うことでオリジナルのカクテルレシピを探せます。
特に検索機能は高度なシステムが採用されており、カクテルの名前はもちろん、好みの味やアルコール度数、アルコールベースの種類といった複数の条件でレシピを探せます。各レシピページには動画が掲載されており、カクテル作りに慣れない人でも簡単に作成できるのが魅力です。
サントリーホールディングスは飲食店ではありませんが、こうしたレシピコンテンツは飲食店こそが得意とするところ。腕のあるシェフと相談し、家庭でも簡単に調理できるオリジナルレシピの情報を発信すれば、ユーザーの興味を引きつけることができます。
【サントリーカクテルレシピ】
https://cocktailrecipe.suntory.co.jp/wnb/cocktail/top/temp__top
事例⑤IPPUDO OUTSIDE
IPPUDO OUTSIDEは、人気ラーメン店の一風堂が運営するオウンドメディアです。
一風堂のブランドが生まれた背景やラーメンへの思いなどを紹介する「IPPUDO STORY」や、ラーメンカルチャー周辺の情報を発信する「INTERVIEW/COLUMN」など豊富なコンテンツが用意されています。ときにはルノーやミハラヤスヒロといった有名ブランドとコラボし、ユニークなコンテンツを提供することもあります。
一風堂と言えばすでに名のあるブランドなので、オウンドメディアの目的は集客よりもブランディングを重視していることがうかがえます。このオウンドメディアを利用すれば「一風堂のことがもっと好きになる」と思える、優れた事例の一つです。
【IPPUDO OUTSIDE】
https://ippudo-outside.net/
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