この記事ではBtoB(B2B)のコンテンツマーケティングについて解説します。
企業のマーケティング活動には様々な手法がありますが、昨今コンテンツマーケティングは様々な業態で取り入れられ、マーケティング手法の中でも高い費用対効果を出すことがよくあります。
今回はB2Bのコンテンツマーケティングでどのように戦略を立て、どのように設計し、どのように運用すると効果的なのかを解説し、実際にB2B企業で行われているコンテンツマーケティングの事例も合わせて解説します。
BtoBビジネスにも様々な種類があり、その特徴を踏まえた上で運用するべき部分もありますが、BtoBコンテンツマーケティング全般に通ずるノウハウもあります。
基礎的な部分から解説していきますので、1つ1つ見ていきましょう。
BtoB企業のコンテンツマーケティングとは?
一般的にコンテンツマーケティングというと、企業がコンテンツをWebサイト、SNS等のプラットフォームに配信してアクセスを集め、見込み客との接点を作ります。
その後、見込み客とのコミュニケーションを繰り返し、ECサイトでの購入や、商談へとつなげて見込み客から、新規顧客になってもらえるよう継続的な関係を築きます。
コンテンツマーケティングでは必ずしもコンテンツを見た見込み客がすぐに顧客になってもらえることを期待するものではなく、企業のブランディングの意味合いや特定の領域でサービス、商品を扱っているということを見込み客に認識してもらい、必要になった際に選択肢に入れるようにする、と言った狙いもあります。
BtoB企業のコンテンツマーケティングの場合には、自社の企業名やブランド名、商材の存在を認識してもらうという狙いやリードを獲得して商談につなげる狙い、場合によっては緊急のニーズがあるケースではにはすぐに受注ができることもあります。
プラットフォームとしては検索エンジン経由でSEO対策を行い、自社コンテンツマーケティング用サイト(ページ)にアクセスを集める、といったリーチの方法がメインです。
SNSも活用されることは多くありますが、やはりBtoBの場合はクライアント担当者が検索エンジンで検索して情報を集めて、製品やサービスを探すケースが多いため、検索エンジン経由で見込み客を集客するルートが最も効率が良いでしょう。
つまり自社の見込み客が持っている課題や、その課題に付属するような情報を発信して、見込み客の役に立つことにより、その後自社のことにも興味を持ってもらうことができるのです。
BtoBでコンテンツマーケティングを行うべき理由
これまでの営業手法は営業がテレアポ等の方法で見込み客を見つけて、実際に販売する部分までを担当していました。
そこにWeb広告が出てきて、インターネット上の広告枠を通して見込み客に対してアプローチする方法が主流になってきました。
しかしコンテンツマーケティングは、最も不特定多数の見込み客にアプローチできる手法であるにもかかわらず、広告ほど浸透していません。
こちらの調査では商材の種類に関わらず、インターネットで情報収集を行う人の8~9割が検索を行っている、とあり少々古い調査ですが、インターネットが年々普及していることを考えると、もはやBtoBでも商材の調査を検索エンジンで行わない人はいないでしょう。
どんなに営業が顧客との接点を作って、自社の商材を説明したとしてもその後その業界やその商材周りの情報収集をインターネットで検索して行うことになるので、そこでさらに競合他社との競争になります。
また、「アメリカの調査会社コーポレート・エグゼクティブ・ボード社が1400社以上のBtoB企業を調査した結果、購買プロセスの57%は営業担当者が訪問する前に終わっていることがわかった」、とされており、このことからも検索エンジン上で前もって顧客との接点をもち、いかに見込み客が課題をもちソリューションを探す段階から自社の存在を知らせるかが大切か、ということがわかります。
営業が顧客と商談する時点ではもう製品の選定や何を買うか、といったことはほぼ決めた状態での商談になるのです。
またBtoC企業との比較をすると、BtoC企業の場合にはプロダクトを合理性の観点で吟味して購買をするというよりも、スピードや手軽さ、イメージで購買に結びつくことが比較的多く、そのためのコンテンツやサービスの設計をすることが多いでしょう。
一方BtoB企業はより自社商品、サービスの合理性をアピールして理屈の上で納得していただく必要があるため、自社メディア(コンテンツマーケティング用サイト)の制限のないスペースで動画等の様々なツールを用いで自社サービスの合理性をアピールできるので、より自社に対して理解度が高くなった見込み客を取り込むことができます。
BtoB企業がコンテンツマーケティングを行う効果
BtoB企業に限らずマーケティング施策を導入する際には、最も効果の高いものから導入したいと考えるのが自然だと思います。
コンテンツマーケティングの効果の出方というのは、他のデジタルマーケティングとは違い、「資産性」の高いマーケティング手法になっています。
リスティング広告、SNS広告の一般的なインターネット広告の広告メニューの中では、クリック課金制と呼ばれる、広告が1回クリックされるごとに費用がかかる料金体系が多くなっています。
こういった広告の特徴はまず初期費用として、サービスサイトやランディングページ、その中のコンテンツを用意して、そこに流入させるアクセスを買う形になり、広告予算がなくなれば基本的にそのサイトに勝手に見込み客が流入してくることはないでしょう。
一方コンテンツマーケティングは一定の投資が成功した段階からは持続的に効果が出ることが多く、時間と共に費用対効果がどんどん上がっていく場合が多いのです。
こちらはコンテンツマーケティングサイトが順調にアクセスを獲得して、コンバージョンを獲得した際にどのように費用対効果(投資対効果)が推移していくかのイメージを表したグラフです。
コンテンツマーケティングを始めた際にはほとんどコンバージョンはない一方、初期費用やコンテンツの制作料金がかかるため、コンバージョン単価が高くなってしまいます。
しかし、コンテンツが検索エンジンで上位表示される、といった成果がでてアクセスが集まり、コンバージョンが獲得でき始めると、累計費用の伸びよりもコンバージョン獲得の伸びの方が大きくなるため、費用対効果(投資対効果)がどんどん高くなるという形になっています。
これがコンテンツマーケティングが「資産」だと言われる理由で、早く始めるほど運用する期間が長くなり享受できるメリットが大きくなるのも他のマーケティング手法にはない特徴の一つでしょう。
BtoBコンテンツマーケティングを成功させるために
BtoBのコンテンツマーケティングを成功させるためには基本的な部分で最低限やっておきたい、施策がいくつかあります。
企業、業態によって適切な方針を定めることが大切ですが、BtoB企業であればある程度共通して効果的な施策はぜひ抑えておくようにしてください。
コンバージョンポイントの設置を工夫する
見込み客がコンテンツを見た後に接点を持つためにコンバージョンポイント、具体的にはお問い合わせ、資料請求、見積もり依頼といったコンバージョンをする入り口(CTA)の部分を工夫する必要があります。
CTAとは…Call To Actionの略で、サイト上でユーザーにとってもらいたい行動に誘導すること。そのためのクリックボタンや、リンク。
BtoB企業の場合特に検索してその場で問い合わせて、その場で契約成立、とはならずじっくりと検討されるため、いかに検討前にコンバージョンにつなげるかが大切です。
例えば、検索キーワードが「〇〇サービス 事例」といったキーワードで流入しているにもかかわらず、いきなりコンテンツ内で「こちらからお申し込み」といったコンバージョンポイントを設置してもあまり反響はないでしょう。
この場合、通常の製品紹介の資料請求よりもその業界やそのサービスに関する事例集を作り、その事例集のホワイトペーパーダウンロードとしてコンバージョンポイントを作った方がコンバージョン率が上がると思われます。
これは自社の商材やターゲットにするキーワードによっても変わってきますが、ターゲットの見込み客目線で考えるようにしてください。
コンテンツマーケティングのチームの構成を決める
コンテンツマーケティングは上記のような大きく費用対効果が伸びるケースがある反面、難易度が高いのが実情です。
成功に最も大切なのは戦略の設計ですが、実際に運用をしていく際には多くの工数とノウハウが必要になります。
運用の際に最低限必要な人員をご紹介します。
マネージャー…コンテンツマーケティングの戦略設計を行い、運用中に方針のずれやコンテンツのクオリティーを管理します。ターゲットの選定や、キーワードの選定、それに対するSEO対策の戦略設定を行い、「効果の最大化」(コンバージョンの最大化)の責任者になります。
編集者…各コンテンツの「企画」を行います。決まった戦略にのっとり、より良いコンテンツ制作のための企画、目次制作を行います。記事であれば内容の構成、動画であれば企画と流れといった部分の制作を行います。
ライター…決まった企画にそって良質な記事を作成するよう努めます。顧客目線でどのような情報をどのような角度でコンテンツにすると、顧客に貢献できるのかを最重要視しましょう。
クリエイター…画像や動画を制作するクリエイターが必要です。画像に関してはWeb上で何度も見たことのあるような画像ではなく、コンテンツとして加工したアイキャッチ画像がおすすめです。
動画もBtoB特有の理屈の流れや最後まで見てもらえるような設計とデザインを心がけましょう。
コンテンツマーケティングは前後が大切
特にBtoBコンテンツマーケティングでよく失敗に終わってしまうパターンは、コンテンツマーケティングを行う部署が営業や開発の部署と連携が取れていない時です。
コンテンツマーケティングは基本的にマーケティングの担当者が行いますが、リード(問い合わせ、資料請求、見積もり依頼)を獲得した際に、顧客とコミュニケーションをとるのは基本的に営業が行うでしょう。
よくあるのはマーケティング担当者としては、リードの獲得件数だけをKPIにしてより多くのリードを獲得しようとします。
リードを獲得するためにはより多くのアクセスが必要になりますからコンテンツの数を闇雲に増やし、より多くのユーザーを獲得してリードの増加を狙います。
しかしそのリードを受け取った営業は受注できていない、ということがとても多いのです。
これはなぜ起こるかというとリードの質が考えられていないからです。
まず会社の製品、サービスは開発部が開発しているケースが多いですが、その業界での強みや特化した特徴というのがあるでしょう。
わかりやすい例としては「東京で法人に対してオフィスの掃除代行サービス」を提供している会社があるとします。
マーケッターとしては検索エンジンの掃除代行というキーワードを狙ってコンテンツ(記事)を制作します。
「掃除代行」という抽象度の高いキーワードであれば他の掃除関連のキーワードよりも検索ボリュームが大きく、アクセスが集まるとそれなりのコンバージョンもする可能性がありますが、東京で、法人客しか相手にしていないため、ターゲットではない地方や個人からのコンバージョンも増えてしまします。
一方、「掃除代行 東京」「掃除代行 法人向け」「オフィス 掃除サービス」といったキーワードで流入したユーザーであればユーザーとサービスがマッチして営業した際にもズレがなくなります。
特にBtoBのコンテンツマーケティングでは自社の立ち位置や棲み分け方に応じて「どこを狙うのか」という戦略を立てて、開発、営業と連携して行うことでさらに効果が上がるのです。
BtoBコンテンツマーケティング事例
これまでご紹介したBtoBコンテンツマーケティングに関してとても優れており、成功していると思われる事例をご紹介します。
センサとは.com(株式会社キーエンス)
キーエンス社に運営されているセンサとは.comセンサ関連の情報を発信しています。
コンテンツとしてはセンサを購入するクエリ(検索キーワード)に向けての情報だけでなく、「光電センサの概要」といった記事コンテンツもあり、センサに対して情報収集している段階の見込み客にまでコンテンツを届けています。
センサの原理や種類を図を多用して説明しており、概要から知りたいユーザーに対しても良質なコンテンツを提供しています。
カタログに関しては300種類上も用意されており、各ページで紹介しているプロダクトに応じて最適な資料のダウンロードを促すことで、コンバージョン率も高いと予想できます。
また特徴的なのが「センサとは.com」以外にも、「安全知識.com」や「接続.com」といったページも用意されており、各カテゴリごとに違うコンセプトのコンテンツマーケティングを行っています。
自社の取り扱っている商材が多い場合にはこのように分割して、カテゴリごとにコンセプトを分けて情報発信を行うことで、ユーザーからも見やすくなり配信側もCTAを最適化しやすいといったメリットがあると思われます。
経営ハッカー(freee株式会社)
freee社に運営されている経営ハッカーもとても良いコンテンツマーケティングの事例だと考えられます。
freee社は会社設立から中小企業向けの会計ソフトといったソリューションを提供している会社です。
日本企業の99%は中小企業と言われているので、その経営者や経理担当者がターゲットとなると、見込み客もBtoB企業のの中では多い分類になると考えられます。
コンテンツとしては会計、人事領域の専門用語を解説したり、話題の経営者のインタビュー記事を制作するといったコンテンツが多くあるようです。
【コンテンツ例】
「減価償却とは?2つの償却率から計算方法まで徹底解説」
「住民税非課税とは?非課税になる条件やメリットについて解説」
ターゲットの選定を明確にできている印象で、専門用語の解説は会社を立ち上げて管理業務関連でわからないことがあった会社の社長が検索していることを想定し、話題の企業や話題の経営者のインタビュー記事も中小企業経営者が興味のあるコンテンツになっています。
Webサイトを見れば、freee社が運営しているサイトだということがわかるので、ブランド名の浸透という観点で見てもとても効果的だと思われます。
CTAに関しても自社サービスの紹介資料へのCTAもサイドバーとうにしっかりと入っているため、ターゲットの興味のあるコンテンツでアクセスを稼ぎ、コンバージョンへとつなげる導線も自然に設計されています。
特徴的なのはオウンドメディアに会員登録を促し限定記事を配信しているようです。
会員になったユーザーはさらに会社との距離が近くなり、サービス導入の検討段階になった時に選択肢に入れたもらえる確率も格段に上がるでしょう。
さらに特徴的なのが、freee社はYouTubeを活用している点です。
経営ハッカーと同様、中小企業の経営者が気になるトピックを解説していたり、freee社のプロダクトの紹介やストーリー性のあるプロモーション動画もあり、コンテンツとして役に立つ、興味が湧く、面白い、といったポートフォリオになっています。
デバイスや通信環境の変化で動画の視聴体験はよくなっており、今後のさらに良くなることが予想されます。
freee社のターゲットである中小企業経営者でWeb上でfreee社のコンテンツを見たことがない、という人はいないだろうというほどテキスト、動画の面でも充実しているため会計ソフト導入時には候補として考えてもらえる可能性がかなり高いと考えられます。
ブログ型コンテンツマーケティング(株式会社LIG)
LIG社のコンテンツマーケティングは世界観が独特で、おもしろ系のコンテンツも多くあります。
会社としての色が出ており、社外に対して自社の情報を発信している、かつビジネス関連の役に立つ情報も発信しているので、自社サービスのアピールにもつながっていると考えられます。
他のコンテンツマーケティングと比べて方針や世界観の設計がとても良くされているので、知名度も上がりやすく、サイト内での回遊率も高いと考えられます。
また、PV数が多いメリットを活かしてサイト内に記事広告を掲載できる、というメディアとしての利用もされているようです。
北欧、暮らしの道具店(株式会社クラシコム)
雑貨等のECサイトを運営しているクラシコム社は基本的なターゲットは個人になるので、BtoCの会社というのが一般的な理解だと考えられますが、中小企業では社内で必要になったものは経営者や担当者がその場で注文するということも多いため、結果的に法人、個人客にリーチできているケースだと考えられます。
ECサイト、取扱製品とコンテンツマーケティングの世界観を統一させて、コンテンツマーケティング用の記事や動画を見た後にECサイトでそのまま買い物をしたくなるように設計されています。
そのプロダクトが実際に使っていることがイメージできるような親近感のあるコンテンツの制作や、すぐにその製品を買うニーズがなくても読み物として楽しんで読めるような内容になっているため、定期的にサイトに訪問しているユーザーも多いと予想され、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客とのコミュニケーションがうまく行われている好例だと言えるでしょう。
B2Bコンテンツマーケティングまとめ
BtoB企業のコンテンツマーケティング事例でどの会社も方針をしっかりと定め、戦略設計を行った上で、顧客の役に立つコンテンツを作っている、ということがよく理解できたかと思います。
特にBtoB企業はサイト内の導線をしっかりと設計して、自社の提供しているサービス、商品と相性の良い訪問者といかに接点を持つかが大切です。
コンテンツマーケティングは成果が出るまでに半年から1年程度はかかるマーケティング施策ですので、始める際の戦略設計や良質なコンテンツを制作する体制をしっかりと準備して取り組むようにしてください。
弊社のコンテンツマーケティング支援サービスについてのご相談も是非お待ちしております。
どうぞお気軽にお問い合わせください。