TikTokはBtoC企業によく活用されていますが、その仕様上、BtoB企業のマーケティングでも十分に効力を発揮します。SNSや動画共有サービスを活用して集客やブランディングを行いたい場合、TikTokの活用を検討してみるのもよいでしょう。
ただし、同じ動画共有サービスでも、TikTokはYouTubeとは仕組みが大きく異なります。本記事でお伝えするTikTokならではの動画制作のポイントや活用方法を押さえていきましょう。
TikTokの仕組みと概要
TikTokは、国内の月間アクティブユーザー数950万人を抱えるSNS型動画共有サービスです。近年はBtoC企業がマーケティングに活用する事例も増えてきましたが、TikTokはブランディングや集客に効果が高いこともあり、BtoB企業のマーケティングにも効果を発揮します。
ここでは、TikTokの仕組みや概要について詳しく解説します。
幅広いユーザー層にアプローチできる
2020年4月、TikTokのアプリはApp StoreとGoogle Playにおける累計ダウンロード数が20億回を突破しました。それ以降2020年8月を除き、App Storeにおけるダウンロード数は毎月ナンバーワンの座を獲得しています。
また、国内の月間アクティブユーザー数(MAU)は950万人を超えます。これは2019年2月に公開された数字なので、現在は1,000万人を超えるMAUを記録していても決して不思議ではありません。
上記のような事情があることから、TikTokでは幅広いユーザー層にアプローチが可能です。利用者の多くは10~20代の若者ではあるものの、30~50代のユーザーにも支持されています。
もっともユーザーの目に触れる「レコメンド」
TikTokには「トレンド」や「メッセージ」といった豊富なコンテンツページが用意されていますが、ユーザーから特に人気を集めているのが「レコメンド」です。
レコメンドページでは、まずユーザーの興味・関心に近い一つの動画が画面全体に表示されます。画面を上にスワイプすると別のおすすめ動画が出現する仕組みです。YouTubeやニコニコ動画などとは異なり、画面をスワイプし続けるだけで簡単に自分が興味のある動画を探せます。
レコメンドページは、ユーザーがもっとも視聴する場所と言っても過言ではありません。よってBtoB企業がマーケティングを行う場合でも、「いかにレコメンドページに自社の動画を表示させるか」という点が大事になります。
レコメンドへの掲載可否はAIが決める
レコメンドページに掲載する動画は、システムに内蔵された高度なAIが決めています。ユーザーの過去の視聴履歴やエンゲージメント(いいねやコメントなど)から興味や関心を読み取り、ユーザーそれぞれに最適化したおすすめ動画を流す仕組みです。
なお、新しく動画を投稿した場合、その動画は必ず100人程度のユーザーのレコメンドに表示されます。そして100人のユーザーがその動画に対してどのような行動を行ったかにより動画の品質が決まり、人気の高い動画ほど高頻度でレコメンドに表示されるようになります。
よってTikTokでは、ユーザーがいいねやコメントをしたくなるような質の高い動画を投稿することが肝要だと考えられます。
投稿できる動画の長さは最長3分
TikTokはもともと、投稿できる動画の長さが最長15秒に制限されていました。その後、最長30秒に拡張され、2021年7月2日からは最長3分の動画を投稿できるようになりました。
BtoB企業の場合、BtoC企業よりも扱う製品が複雑なことが多く、投稿動画の尺が拡張されたのは大きなメリットと言えるでしょう。動画の尺が長いほど、製品のメリットや特徴、ユーザーのベネフィットを詳しく訴求できるからです。
誰でも手軽に動画の撮影と編集ができる
TikTokアプリの内部には独自の撮影・編集機能が搭載されています。
アプリのトップページから「撮影ボタン」をタップすると、画像のような撮影モードに移行します。動画を撮影後は、エフェクトやフィルターといった簡易的な編集ができるため、誰でも気軽に動画を投稿できます。
マーケティング用の動画を投稿する場合でも、この機能を利用すれば高度な機材を揃える必要がありません。
ただし、動画撮影はスマートフォンのカメラ機能を使用するため、動画の品質を高める場合には、撮影機材や編集ソフトの整ったプロの動画制作会社に依頼したほうが無難です。
BtoB企業の会社やサービスのマーケティングに効果的
では、動画マーケティングを実施することでどのような効果が現れるのか、BtoB企業がTikTokを活用するメリットを解説します。
ブランディングや集客に有効
BtoBのマーケティングにおいて、TikTokが効力を発揮するのは主にブランディングや集客の部分です。
TikTokには日々大量のアクセスがあり、自社が投稿した動画の露出機会を増やせます。新規に投稿した動画は、最低100人ほどのレコメンドに表示されると言われています。
ユーザーに質の高い情報を提供すれば、「共有」機能によってほかのSNSに情報が拡散されることもあります。仮に自社のイメージアップにつながる動画であれば認知拡大に役立ち、自社サイトやLP(ランディングページ)のリンクを掲載しておけば集客にも効力を発揮します。
問い合わせ獲得といったCVにも効果がある
TikTokでは、マーケティングの施策次第で「問い合わせ」や「資料請求」といったCV(コンバージョン)に結び付けることもできます。
たとえば、動画の概要やプロフィールページにLPのリンクを掲載しておくとしましょう。するとTikTokそのものがリスティング広告やSNS広告のような役目となり、CTA(行動喚起)を促すLPにユーザーを誘導できます。
また、TikTok広告を配信するのも効果的です。TikTok広告にもCVにつながるLPや自社メディアのリンクを掲載できます。広告メニューによっては最大550万人ものユーザーにリーチできるため、仮にリンククリック率が1%だとしても5万以上のアクセスを見込めるということです。
LPや自社メディアへのPVが高まった結果、CVの向上が期待できます。
ユーザーとの接触回数を増やせる
TikTokの自社アカウントに動画を拡充すれば、ユーザーから毎日アクセスしてもらえる可能性が高まります。ユーザーとの接触回数が増えることで、アプリ内におけるエンゲージメントの増加やユーザーとのつながりの強化といった恩恵を得られます。
ただし、YouTubeとは異なり、TikTokではアーカイブ動画の数や視聴回数が増えても多数のフォロワーを獲得できるとは限りません。TikTokで動画が拡散するのは、あくまで新規動画が多数のエンゲージメントを獲得するのが条件です。よって単に投稿動画の数を増やすのではなく、一つひとつの動画の質を高めることに注力しましょう。
コンセプトと目的を決めて動画制作をする
TikTok用の動画制作を行ううえで重要なポイントは、以下の通りです。
- 動画を運用する目的を定める
- 目的に沿ったコンセプトを決める
- 複数のチャネルを活用した導線を決める
先述した通り、TikTokでは動画一つひとつの質が極めて重要です。もし動画制作を進めていくうえで不明な点などあれば、TikTokの動画に詳しい制作会社に相談してみるとよいでしょう。
それぞれのポイントについては、以下で詳しく解説します。
動画を運用する目的を定める
まずはBtoBのマーケティングを行う目的を定めておきましょう。目的を定めずに動画制作を進めてしまうと、製品の機能やメリットの訴求ばかりの混雑した動画になってしまい、結局何が伝えたいのかが分かりづらくなってしまいます。
目的を決める場合、最初に自社が抱えている課題を明確にします。
課題 | 課題を解決に導く目的 |
自社サイトやSNSに人が集まらない | 【集客】 動画を起点にWebサイトやSNSに集客 |
資料請求や問い合わせ数が少ない | 【見込み客の創出】 動画やプロフィールからLPに誘導 【リードナーチャリング】 動画からオウンドメディアに誘導し、時間をかけて購買意欲の醸成をはかる |
商談の成約率が低い | 【見込み客との関係性強化】 YouTubeと組み合わせ、ユーザーのベネフィット訴求、製品を使ったノウハウ・情報提供を継続的に実施 |
上記はあくまで一例となります。BtoBにおける購買プロセスのなかで、自社がどの部分に課題を抱えているのかをあぶり出しましょう。そのうえで仮説を立て、課題を解決するための目的に落とし込むのがポイントです。
目的に沿ったコンセプトを決める
目的が決まれば、今度は動画の具体的なコンセプト設計と企画を考えます。
コンセプト設計と企画を考える場合、重要となってくるのがTikTokのAIアルゴリズムです。TikTokのAIがどのように動画を評価しているのか、そのアルゴリズムを知っておくと質の高い動画を制作しやすくなります。
TikTokのおすすめのレコメンドの仕組みはある程度公開されていますが、新規投稿された動画に対して以下のような考え方をするとユーザに支持されているか考える上で、参考になるでしょう。
(https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/how-tiktok-recommends-videos)
検証要素 | 検証内容 |
いいね数 | 投稿時、レコメンドに表示される約100人のユーザーからどの程度いいねを獲得できたかで評価が異なる。1回でもいいねを獲得すれば評価が高まり、別のユーザーのレコメンドにも表示されやすくなる。 |
コメント数 | コメント数が多いほど複数ユーザーのレコメンドに表示されやすくなる。 |
シェア数 | シェア数が多いほど複数ユーザーのレコメンドに表示されやすくなる。 |
プロフィール表示回数 | 動画からプロフィールページにアクセスしたユーザー数が多いほど高評価を得る。 |
平均視聴時間 | 投稿動画の長さに対し、ユーザーが何秒間動画を再生したかという指標。平均視聴時間が長い動画ほど高評価を得る。 |
視聴完了率 | 投稿動画の長さに対し、ユーザーが何秒間動画を再生したかを割合で示した指標。平均視聴時間と似ているが仕組みはまったく異なる。たとえば15秒の動画をすべて見てもらえれば平均視聴時間は15秒、視聴完了率は100%になる。一方、180秒の動画を120秒見てもらった場合、視聴完了率こそ66%で劣るが、平均視聴時間は120秒なので前者に勝る。ただ、平均視聴時間よりも視聴完了率が高い動画のほうが高評価を得られる。 |
フル視聴率 | アプリ内の回遊率を防ぐために直近のアップデートで追加された評価指標。一つの動画をすべて視聴したユーザーの割合を示し、フル視聴率の高い動画は評価が大幅に上昇する。 |
では、上記のAIアルゴリズムを踏まえたうえで、どのような動画を制作すべきか、そのポイントを解説します。
ユーザーを飽きさせない加工を施す
コンテンツの質を高めるには何よりも動画の内容が重要ではあるものの、ユーザー飽きさせない表現を意識することも大切です。可読性を高めるためにテロップを入れたり、心地よいBGMで快適に視聴できる環境を作ったりと、編集にもこだわるとよいでしょう。
一瞬で興味を引く工夫を施す
TikTokのユーザーは、その動画に興味があるかどうかを瞬時に判断します。興味がない場合は即座に画面をスワイプしてしまうため、動画が表示された一瞬のうちにユーザーの関心を引く必要があります。動画の内容が分かるキャッチコピーを冒頭に挿入する、問いかけで興味を引く、インパクトのあるビジュアルを表示するといった方法が効果的です。
流行りのBGMを使用する
TikTokや世間で流行っているBGMを背景に流すと、動画の冒頭で興味を引けない場合でも、「好きな曲を最後まで聴きたい」という思いからフル視聴につながる可能性が高まります。動画を最後まで見てもらうことでユーザーにとって新たな発見があれば、いいねやフォローといったエンゲージメントにつながりやすくなるでしょう。
複数のチャネルを活用した導線を決める
TikTokの動画を制作する場合、あらかじめBtoBマーケティングのプロセスを再確認しておきましょう。BtoBマーケティングの基本的なプロセスは以下の通りです。
1、リードジェネレーション
広告やSEO対策などによってユーザーを集客し、見込み客へと醸成をはかる段階。
2、リードナーチャリング
リードジェネレーションによって創出した見込み客は、まだ商品の認知や購買意欲が十分に高まっていないため、いきなり商談に持ち込んでも成約の見込みが薄い。オウンドメディアの回遊や資料請求、メルマガによるノウハウ提供などによって中長期的な関係性を結び、徐々に商品の認知や購買意欲の醸成をはかる。
3、リードクオリフィケーション
ナーチャリングによって自社に対する興味・関心を醸成させた見込み客のうち、「営業をかけるべき見込み客」のみを抽出する段階。スコアリングによって成約見込みの高そうな見込み客を絞り込み、マーケティング部門から営業部門にリストを送客する。
基本的にTikTokの役割は、リードジェネレーションの集客の段階にあります。ショートムービー主体のTikTokは、ダイジェスト動画でユーザーの興味・関心を引くことに長けているからです。
たとえばTikTokでダイジェスト動画を見せた後、YouTubeに誘導して詳細なプロモーション動画を見てもらいます。これはまだリードジェネレーションの段階です。
その後、オウンドメディアに見込み客を誘導し、メルマガへのCTAをはかって定期的なコミュニケーションへとつなげます。オウンドメディアに誘導した時点でリードナーチャリングへと発展しているのが分かるでしょう。
TikTokだけで商品の認知から購買促進まで実施するのは困難なので、上記のように複数のチャネルを組み合わせてマーケティングプロセスを構築するのが大切です。
BtoBのTikTok活用に関してはぜひ弊社までお問い合わせください。