通販の利便性向上やコロナ禍の外出自粛により、ECサイトの数が日増しに増えています。
既存ECサイトにとってはライバルサイトが乱立し、従来の広告やマーケティング施策だけでは集客が難しくなってきました。
そのような中、にわかに注目を集めるのがコンテンツマーケティングです。
広告とは違い受動的なマーケティング手法ですが、企業による押し売り感が和らぎ、新規顧客獲得やブランディング、ニーズの育成といった効果が期待されています。
今回は、ECサイトでコンテンツマーケティングを行うメリットや活用方法をご紹介します。
また、コンテンツマーケティングに成功した事例もお伝えするので、より具体的な活用方法が理解できます。
以下の流れで解説し、EC通販のコンテンツマーケティングについて基礎から包括的に理解することができます。
- EC×コンテンツマーケティングの概要とメリット
- EC・通販サイトとコンテンツマーケティングの種類
- コンテンツマーケティングのポイント
- EC・通販サイト×コンテンツマーケティングの事例
通販・ECサイト×コンテンツマーケティングとは
- EC×コンテンツマーケティングの概要とメリット
- EC・通販サイトとコンテンツマーケティングの種類
- コンテンツマーケティングのポイント
- EC・通販サイト×コンテンツマーケティングの事例
コンテンツマーケティングとは、ユーザーに価値のあるコンテンツを提供することで、見込み顧客の獲得から購買意欲の喚起、ロイヤリティの向上などを行う施策です。
コンテンツにはさまざまな種類があり、SEO記事や動画、メルマガなど、ターゲット層のニーズに合わせて適切なコンテンツを提供することがポイントになります。
ECサイトにコンテンツマーケティングが必要な理由
従来であれば、ブログやオウンドメディアの中でコンテンツマーケティングを展開する方法が一般的でした。
しかし、昨今では通販サイトが乱立し、激しい競争の中で自社ECサイトへのアクセスを伸ばす必要があるため、コンテンツマーケティングの導入が重要視され始めています。
出展:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果」
経済産業省が2020年7月22日に公表した「電子商取引に関する市場調査の結果」によると、国内BtoC企業のEC化率は6.76%(2019年)で、2010年に比べて約2.4倍に拡大しました。
ここ10年で数多くの企業がECへ参入したことを表し、競争が激しくなっています。
コンテンツマーケティングの3つの効果
ライバル企業が多いほどECサイトの集客は困難となります。
1人の見込み顧客を獲得するための広告単価が上昇するからです。
つまり、広告を長期にわたって掲載しようとするほど、集客コストが増していきます。
上の図のように一般的なインターネット広告では、月額で予算を用意して広告を配信していきますが、純粋に同じように配信していると、年々単価が上がっている影響を受けてコンバージョン単価が上がってしまうECサイトが多くあります。
一方のコンテンツマーケティングの場合、発信したコンテンツは自社またはサービスプラットフォーム(GoogleやYouTubeなど)に残り続けます。
広告のように一過性の情報発信を行うのではなく、コンテンツを制作し続けると情報資産が蓄積されていくため、施策が長期に及ぶほど顧客獲得コストが減少する点がメリットです。
順当に進めれば、このように資産としてのコンテンツが蓄積するにしたがって、コンバージョン単価が時間やコンテンツの量と共にどんどん下がっていくことがわかります。
インターネット広告とコンテンツマーケティングの数値の推移イメージを比べると、時間が経つと共に費用対効果に優位性が現れているのがわかります。
マーケティングや集客は継続的に続けていくものですので、コンテンツマーケティングとECサイトが相性が良いのがわかります。
上記のようなコンテンツマーケティングをECサイトに導入すると、次のような効果が見込めます。
- ECサイトや商品の認知度拡大(新規顧客獲得)
- 新規・既存ユーザーの購買意欲の喚起(CVR向上)
- リピーターの増加(ファン獲得)
広告はサイトへの流入を目的にしていますが、コンテンツマーケティングは潜在・顕在層のターゲットニーズに応じて自由な発想で施策を行えます。
さらに広告やSNSなど、幅広いマーケティング手法と相性が良く、その組み合わせ次第で売上増や販売数増に大きく寄与します。
EC・通販サイトとコンテンツマーケティングの種類
- EC×コンテンツマーケティングの概要とメリット
- EC・通販サイトとコンテンツマーケティングの種類
- コンテンツマーケティングのポイント
- EC・通販サイト×コンテンツマーケティングの事例
コンテンツマーケティングは、検索エンジン型や写真型などさまざまな種類があります。
ここでは、コンテンツマーケティングをECサイトにどのように応用できるのか、それぞれの種類ごとに解説します。
検索エンジン型コンテンツマーケティング
検索エンジン型のコンテンツマーケティングとは、主にオウンドメディアやブログにSEO対策を施し、Googleなどの検索エンジンへコンテンツを上位表示させて見込み顧客を獲得する施策です。
検索エンジンの1~10位は検索ユーザーが真っ先に目に触れる箇所なので、コンテンツが上位に位置するほどアクセス数が高まります。
検索エンジン型の活用方法としては、ECサイトとは別にオウンドメディアを開設するか、ECサイト自体にブログやコラムページを設置することができます。
たとえば、ECサイトで洗濯機を扱っている場合、すでに自社サイトを知っているユーザーは容易に洗濯機の販売ページへアクセスできます。
一方、自社サイトの存在を知らないユーザーには、まず認知拡大を図らなければなりません。
そこで、検索ユーザーのニーズを基に最適なコンテンツを用意し、そこから販売ページへとアクセスを促す方法が使えます。
たとえば洗濯機ユーザーは商品を購入する前に、「縦型か、ドラム式か」というタイプの選別に迷うはずなので、「洗濯機は縦型・ドラム型どちらがおすすめ?」などの記事コンテンツを用意できます。
上記のようなコンテンツがあれば、ユーザーのお悩み解決から自社商品紹介の流れをスムーズに構築できるばかりか、しっかりとSEO対策を行っておくと検索エンジンからの潜在ユーザーのアクセスも期待できます。
写真型(SNS型)コンテンツマーケティング
写真型(SNS型)コンテンツマーケティングとは、InstagramやFacebookなどに自社商品にまつわる商品を掲載し、そのコンテンツを基にブランディングやユーザーとのコミュニケーションを促進する施策です。
特にInstagramでは、過去に販売した製品をカタログのように掲載できます。
SNSプラットフォーム内では「#(ハッシュタグ)」を使って話題性の高い画像を簡単に検索できるため、情報がバイラル的に拡散する点が特徴です。数多くのフォロワーが付けば、広告費をかけずに数多くの見込み顧客をECサイトへ流入させることができます。
ECサイトに写真型コンテンツマーケティングを活用するには、事例紹介型のコンテンツが適します。
たとえば、単に商品の画像を掲載し、概要欄に商品の特徴やPR文章を書くだけでは、ほかのSNSユーザーは情報を拡散する起点が見出しにくくなります。
一方、アパレルブランドなら自社商品を使ったコーディネート写真や、美容ブランドならモデルを活用したメイク画像などを掲載しておくと、SNSユーザー同士の話題が合いやすく情報の拡散にも期待できます。
動画型(YouTube、TikTok)コンテンツマーケティング
動画型コンテンツマーケティングとは、YouTubeやTikTokなどの動画共有サービスでコンテンツの配信を行い、画像よりも直感的な商品PRや販売促進を行う手法です。
動画コンテンツにはさまざまな発信方法があり、商品紹介や使い方の紹介、ブランディング、購買者へのインタビューなどが挙げられます。
YouTubeの場合は、Googleに次ぐ国内トップクラスのアクセス数を持ち、幅広い顧客層に向けてコンテンツを発信できる点がメリットです。
一方のTikTokは、主に10~20代の若者の情報共有・拡散に向きます。
いずれも商品の魅力を短時間に、より視覚的にアピールできるため、ECサイトとの相性は抜群です。
たとえば、YouTubeに投稿した特定商品の使い方説明動画を、ECサイトの各商品ページに貼り付けることができます。
1つの商品ページを作る手間がかかるものの、見込み顧客は実際に商品を使った姿をより鮮明にイメージしやすくなり、購買意欲の促進につながります。
EC・通販サイトでコンテンツマーケティング始める際のポイント
- EC×コンテンツマーケティングの概要とメリット
- EC・通販サイトとコンテンツマーケティングの種類
- コンテンツマーケティングのポイント
- EC・通販サイト×コンテンツマーケティングの事例
ECサイトでコンテンツマーケティングを実施する前に、まず以下4つのポイントを押さえることが大切です。
事前に計画や戦略を立てておくことで、コンテンツマーケティングの成功率が高まります。
- 目的に応じたコンテンツを計画する
- 自社商品やサービスを見つめ直す
- 社内リソースやノウハウの確保
- 継続してコンテンツの発信を行う
目的に応じたコンテンツを計画する
コンテンツマーケティングを実施する目的は、各ECサイトによって異なります。
たとえば、「ECサイトへのアクセス数を増やしたい」というケースもあれば、CVRの向上やリピーターの増加を目的とする場合もあります。
そして、その目的に応じてコンテンツの内容を考えることがポイントです。
仮に、ECサイトへのアクセスアップが目的の場合、SEOを意識したコンテンツが適します。
GoogleやYahoo!を利用する検索ユーザーのニーズを捉えてコンテンツを発信することで、「検索」というアクションを今度は「購買」という行動へと変えられるのです。
ほかにも、見込み顧客の購買意欲を高めたいならレビュー記事やインタビュー動画、使い方解説動画が向きますし、リピーターを確保するならメルマガやSNSコンテンツが合っています。
自社商品やサービスを見つめ直す
ECサイトがコンテンツマーケティングを実施するのは、自社商品やサービスを見つめ直す良い機会です。
なぜなら、自社商品やサービスの特徴をよく理解していなければ、価値の高いコンテンツを制作するのは困難だからです。
たとえば、どこにでもある平凡な文房具を扱っていたとします。
もし、コンテンツを制作するスタッフ自身がその商品を平凡なものだと認識していると、商品の魅力やPRをユーザーへ伝えることはできません。
しかし、どれだけ平凡そうな見た目でも、一つひとつの部品まで精魂込めて作る生産者の背景があったり、他社にはないカラーバリエーションを展開しているなど、各社のこだわりが必ずあるものです。
そのため、もう一度商品やサービスの内容を見直し、「ユーザーへ何を一番伝えたいのか」という部分を明確にしておきましょう。
商品の魅力を見つけるにはSWOT分析が役立ちます。
もともと自社の強みや外部環境の脅威を発見するマーケティングのフレームワークですが、自社と他社の商品を比較し、自社商品だけが持つ強みや弱みを分析する場合にも便利です。
社内リソースやノウハウの確保
コンテンツマーケティングには、資産性が高く、長期継続によって顧客獲得コストを軽減できるメリットがあるものの、日々コンテンツを発信し続けなければならないというデメリットがあることも事実です。
よって、事前に組織的な体制整備が要ります。
まずは社内の人的リソースやコンテンツマーケティングにかかわるノウハウを確認し、専属チームを組むことから始めてみましょう。
企画の考案や修正指示などを行うディレクターのほか、記事を作成するライター、校正や校閲を行うエディター、画像やロゴ、動画の素材などを用意するイラストレーターなどの人材が必要です。
社内の人材が不足する場合は、各ポジションの新規採用を行うか、コンテンツマーケティング専門の企業へ外注する方法もとれます。
コンテンツマーケティングは大きく長期的なプロジェクトになり、効果が出てくるのに数ヶ月以上かかる施策なので、失敗する要因はなるべく排除して始めることがポイントです。
継続してコンテンツの発信を行う
最後に、コンテンツの発信は継続しないことには意味がありません。コンテンツマーケティングの大部分は、コンテンツという資産が蓄積して初めて効果を発揮するからです。
たとえばSEO記事を発信する場合。
最初の1ヶ月はこまめにコンテンツを発信し、Googleの検索結果で見事上位を獲得したとしても、そこで記事の投稿をストップしてしまうと検索エンジンから「更新されていないサイト」と判断され、上位コンテンツや既存記事の順位は徐々に下がる可能性が高くなってしまいます。
また、動画コンテンツも同様です。誰であれ視聴者は、しばらく更新がストップしているチャンネルがあれば早々に見限り、興味のあるほかの動画へ流れていきます。
そのため、ユーザーに価値のある情報を、日々発信することを心掛ける必要があります。
ECサイトのコンテンツマーケティング事例
- EC×コンテンツマーケティングの概要とメリット
- EC・通販サイトとコンテンツマーケティングの種類
- コンテンツマーケティングのポイント
- EC・通販サイト×コンテンツマーケティングの事例
すでにECサイトにコンテンツマーケティングを導入し、成功している企業も存在します。
ここでは、ECサイトのコンテンツマーケティングで成功した事例を独自に分析してご紹介します。
北欧、暮らしの道具店
【北欧、暮らしの道具店】https://hokuohkurashi.com/
検索エンジン型コンテンツマーケティングをうまく活用する事例に、「北欧、暮らしの道具店」があります。
北欧ブランドのファッション小物やキッチン用品、インテリア雑貨を扱うECサイトです。
当ECサイトでは、商品を仕入れるバイヤー自身が定期的にコラムを提供しています。
バイヤー自身が実際に使って役立つ商品を画像付きで紹介したり、各スタッフに愛用する北欧グッズを取材するなど、販売している商品の使い道をイメージしやすい工夫がコンテンツの随所に見られます。
サイトを見ると分かりますが、ECサイトというよりもまるで雑誌のような雰囲気です。
そのため、サイトを巡回していても押し売り感をあまり受けず、「モノ系雑誌を見ていると、なぜかその商品が欲しくなる」というような感覚に陥ります。
商品を買った後も「買わされた感」が少なく、ユーザーが再来訪しやすい優れた事例といえるでしょう。
RICE RORCE(ライスフォース)
【RICE RORCE】公式サイト:https://www.riceforce.com/
SNS型のコンテンツマーケティングを活用した成功事例が、「RICE RORCE(ライスフォース)」です。
お米を独自技術で発酵させた美容成分ライスパワーエキスを使った化粧品のECサイトです。
当ECサイトがコンテンツマーケティングのプラットフォームに選んだのはFacebookで、SNSでよくありがちな外部サイトへ飛ばすプロモーション要素の強い投稿は極力避け、メイン顧客層である30~50代の女性が共感できるようなコンテンツ制作に注力しています。
Facebook:https://ja-jp.facebook.com/riceforce/
たとえば、自分の肌タイプを4種類の中から簡単に確認できる診断コンテンツや、乾燥肌になる原因や解消方法を紹介するノウハウコンテンツなどです。
ほとんどの投稿はコンテンツの内容が中心で、商品PRは控えめになっています。
メインターゲットにとっては役立つ情報ばかりなので、ブランドへの愛着やロイヤリティの向上、情報共有による認知拡大に寄与している好例です。
ozie
【ozie】公式サイト:https://www.ozie.co.jp/
動画型コンテンツマーケティングを巧みに活用した事例に、「ozie」が挙げられます。紳士用のビジネスシャツをメーカー直販で売り出すECサイトです。
当ECサイトは、2011年1月にYouTube公式チャンネルを開設。
投稿する動画はプロモーションやブランディング用ではなく、TPOに応じたシャツの着用方法や入学式に向くスーツコーディネートなど、非常に実用的な内容ばかりです。
普段から仕事で着用する機会の多いシャツやネクタイですが、正しい着用方法やメンテナンス方法などは、自分から積極的に情報を集めないと知らない知識が多いことが現状です。
そこで当ECサイトでは、YouTubeでシャツやネクタイに関するノウハウを公開するかたわら、サイト内にも動画を掲載し、着こなし方などに悩むユーザーのノウハウ習得の手助けを行っています。
こうしたコンテンツの提供により、「シャツといえばozie」というイメージが醸成され、ECサイトでの売上増やリピーターの獲得、ロイヤリティの向上といった効果につながっています。
ECサイト・通販サイトのコンテンツマーケティングは戦略が最重要
ECサイトのコンテンツマーケティングは戦略部分が最も大切です。
自社の扱う商材によってコンテンツマーケティングの種類や戦略、投資する座組みも変わってきます。
「SEOによるコンテンツマーケティングを始めたが、そもそもサイトがSEOに弱かったので、コンテンツを作っても全く上位表示されなかった」といった投資が全て無駄になるケースもよくあるため、事前調査を欠かさず始めるようにしましょう。
ECサイト・通販サイトのコンテンツマーケティングに興味のある企業様はぜひお問い合わせください。