企業でコンテンツマーケティングを実施するには、まず企画書や提案書を作る必要があります。
企画書や提案書を上司が承認して初めて、コンテンツマーケティングを実施できるというケースも珍しくありません。
しかし、コンテンツマーケティングの企画書には具体性が求められます。
具体性がなければ、企画書や提案書を見た人は、この施策によって具体的にどのような成果が得られるのか、という点がイメージできないからです。
そこで、企画書や提案書に具体性を持たせるために欠かせない8つの要素を理解しておきましょう。
今回は、コンテンツマーケティングの企画例を参考に、企画や社内提案をする際に押さえておきたい要素を解説します。
コンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングとは、記事の読者や動画の視聴者に価値のあるコンテンツを提供し、潜在顧客の獲得からニーズの育成、購買促進、リピーターの増加といった1人のユーザーが体験する一連の流れを構築する施策です。
各チャネルに応じた適切なコンテンツを提供できれば、アクセス数拡大やロイヤリティ向上といった成果が期待できます。
最近は数多くの企業がWeb上でのコンテンツを拡充しています。Web上でのライバルが増えるに連れディスプレイ広告やリスティング広告の単価も上昇し、従来のマーケティング手法ではアクセスアップやCVR向上といった効果が薄まりつつあります。
一方、資産性の高いコンテンツを顧客ニーズに合わせて適切に投入することで、より費用対効果の高いマーケティングが可能です。そのためにも、コンテンツマーケティングの企画をじっくりと考案しなければなりません。
コンテンツマーケティングの企画・社内提案をする際に押さえたい要素
コンテンツマーケティングを実施する際は、頭の中で構想を練るだけではなく、その内容を企画書や提案書に落とし込むことが大切です。
なぜなら、幅広いニーズを持つユーザーに対し、各チャネルにおいてさまざまな施策を行う必要があるからです。
そこでまずは、企画書や提案書を作成する際に押さえておきたい要素を理解しておきましょう。
目的の設定 | なぜコンテンツマーケティングを実施するのか、なぜ必要なのかといった点をまとめる。例としては、Webサイトへのアクセス数増加や、ECサイトのコンバージョン向上など。その結果として新規顧客獲得等。 |
ターゲット・ | コンテンツを提供する想定ターゲットと、ターゲットをより明確に絞り込んだペルソナを設定する。 |
目標・KPI設定 | 目標となるKPI(重要業績評価指標)を設定する。1つのKGI(重要目標達成指標)から複数のKPIを設定し、日々の検証・改善を行う。 |
戦略設計 | 各チャネルにおける消費者のニーズに対して、どのような手段(検索エンジンやSNSなど)を使ってコンテンツを提供するかを決める。 |
コンテンツの | 具体的なコンテンツの中身を設計する。戦略に基づいてコンテンツの種類を決め、消費者のニーズに対する適切なコンテンツを考案。 |
運用体制 | コンテンツマーケティングを実施するうえで必要な人員やリソースを確認する。そのうえで運用計画を組む。 |
リソース確保 | 運用に必要な人員やリソースを実際に確保し、内製化できる部分や外注が必要な箇所を明確にする。 |
予算 | 人員やリソースを確保するための予算をまとめる。 |
目的の設定
コンテンツマーケティングではまず、「何のためにコンテンツマーケティングを行うのか」「なぜコンテンツマーケティングが必要なのか」といった目的を設定する必要があります。
たとえば、コンテンツマーケティングを実施する目的には次のような例が挙げられます。
- Webサイトへのアクセス数を高める
- 商品やサービスに対するCVR(コンバージョン率)向上
- ブランドイメージやロイヤリティの向上
- ユーザーとのコミュニケーションを深め、ファンの数を増やす
従来、マス広告やWeb広告はアクセスアップには効果を発揮しても、CVRやロイヤリティの向上、リピーターの増加といった役割は期待できませんでした。
一方のコンテンツマーケティングは、コンテンツの内容と発信方法によってアクセスアップ以外の効果も期待できます。
上記4点は、まさしくコンテンツマーケティングが得意とする要素です。
最初に目的を明確にしておく理由は、コンテンツマーケティング全体の軸を作る必要性があるからです。
目的が定まっていないとコンテンツの内容そのものが曖昧になり、読者や視聴者からすれば「企業が伝えたい情報」が分かりにくくなります。
その結果、サイトへのアクセスやコンバージョンの向上にはつながらず、コンテンツマーケティングの成果も中途半端になるため、まずは目的を明確にすることから始めましょう。
ターゲット・ペルソナ設定
コンテンツマーケティングではターゲットの設定はもちろん、ターゲットをより細かく絞り込んだペルソナを考案することも、企画を考案する際には重要になってきます。
対象となるユーザー一人ひとりは、商品への興味から購買に至るまでの間に異なるニーズを持っているからです。
たとえば、特定の商品に対して興味や関心がない状態の消費者は、まずその商品をカテゴリーに分類し、大きく分けたカテゴリーの中から知識を習得しようとします。
冷蔵庫が欲しければ、最初に「ソニーの○○という冷蔵庫が欲しい」とは思いません。まず、「複数の冷蔵庫のスペックや価格を比較したい」「狭いスペースにも置ける冷蔵庫を絞り込みたい」と考えるのが自然です。
次に、比較検討から特定の冷蔵庫が見つかれば、「型番○○の冷蔵庫をより詳しく知りたい」というニーズが生まれます。
さらに情報収集によってその冷蔵庫が気に入った後は、「安く買う方法を知りたい」「近くで扱っている店を探したい」と考えるでしょう。
上記のように、商品への興味から購買に至るプロセスの間で、同じ消費者が複数のニーズを持っていることが分かります。
よって、各プロセスの間のニーズを想定し、その要望を持つ具体的な人物像をペルソナとして設計する必要があるのです。
ペルソナを細かく設定するほど適切なコンテンツの企画ができ、コンテンツマーケティングの成果がより高まります。
目標・KPI設定
目標やKPI(重要業績評価指標)を設定する際は、同時にKGI(重要目標達成指標)についても理解しておきましょう。
KGIにあたる指標は売上高や成約数、利益率などで、目標やゴールと呼べる具体的な基準のことです。
一方、KPIはKGIを達成するための指標を指し、たとえば売上高というKGIを達成するための平均単価や販売数といった細分化された基準です。
では、仮に「会員制サイトの会員費売上を伸ばす」という目的でコンテンツマーケティングを実施したとします。
この目的に対するKGIは「会員費による売上高1億円」となります。
すると、そのKGIを達成するには、「平均単価(プランごとの会員費の平均やLTV)」と「会員数」の2種類のKPIが必要です。
会員費による売上高は平均単価と会員数の積によって求められるからです。
仮に「会員数」のKPIが20万人だとすると、その数の人を集めるためには「PV1,000万」や「CVR2.0%」といったさらに細分化したKPIが必要になるケースもあります。
上記のように、コンテンツマーケティングを行う目的やKGIを達成するために必要な要素を洗い出していくことで、KPIを容易に設定できます。
また、KPIは設定するだけではなく、日々の運用データを検証し、ズレが生じた場合は改善することが大切です。
コンテンツマーケティング全体の戦略設計
コンテンツマーケティングの戦略設計とは、どのような形でコンテンツを発信するのか、という具体的な指針を表します。
この戦略設計を構築するためには、コンテンツマーケティングの活用方法を理解する必要があります。
コンテンツマーケティングの人気の活用方法は次の4種類です。
- 検索エンジンにWeb記事を掲載する
- FacebookやInstagramなどSNSの投稿や画像をコンテンツ化
- YouTubeやTikTokなどで動画コンテンツを発信
- メルマガや定期配信メールにコンテンツを掲載
上記4種類の内、どの方法を活用するかによって戦略は大きく異なります。
それぞれ役割やノウハウが大きく異なるからです。
検索エンジンを対象にする場合は、SEO対策によって多数のアクセスを獲得できます。
SNSの場合はユーザーとのコミュニケーション手段に適しており、メルマガは既存顧客への再購入促進に向くなど、手段によって役割や期待できる効果はさまざまです。
よって、最初に設定したコンテンツマーケティングを行う目的やペルソナに対して、もっとも効力を発揮する手段を選ぶことが大切です。
Webサイトへのアクセスアップなら検索エンジンを、ブランディングやプロモーションは動画、コミュニケーション促進ならSNSなど、それぞれの手段の役割を理解することで高い効果が期待できます。
コンテンツの企画
戦略設計ができた後は、実際にコンテンツの企画を行っていきます。
企画書や提案書の段階で可能な限り多くの企画を考えておくとオウンドメディアやチャンネルをスムーズに運営できます。
コンテンツの企画を行う際は、まずペルソナのニーズを想定し、そのニーズに適った内容を考えることが重要です。
たとえば、検索エンジンに掲載する記事コンテンツを制作するとします。
特定の商品を選ぶ前に多数の商品から比較検討を行いたいニーズがあるとすれば、自社で扱う製品と同分野の比較検討記事を制作できます。「○○製品の選び方」といった選定基準を示すのも方法の一つです。
消費者ニーズを参考にするためには、検索エンジンであれば検索キーワード、SNSや動画であれば現在注目されているハッシュタグなどが役立ちます。
Googleキーワードプランナーではどのようなキーワードがどれくらい検索されているか、を確認することもできるため、コンテンツポートフォリオを作るのに役立ちます。
また、競合他社がどのようなコンテンツを、どのような形で発信を行っているかもチェックしておきましょう。
他社の事例を知っておくとコンテンツの企画に大いに参考になります。
運用体制
コンテンツマーケティングを実施するには、数多くの人員やリソースが必要です。
企画や各メンバーを束ねるディレクターのほか、SEOスペシャリスト、記事や動画の台本を作るライター、コンテンツを校正・校閲するエディター、画像や動画の素材を用意するイラストレーター、動画クリエイターといったスタッフが代表的です。
人員のほかにもコンテンツの掲載先やコミュニケーションツールも整備しておきましょう。
Web記事を発信するのであればオウンドメディアやブログ、動画なら専用チャンネルやSNSアカウントなどが要ります。
また、複数人でメッセージのやり取りを行うチャットツールや、各スタッフの作業を可視化するタスクマネージャーなど、実際にコンテンツを制作する前に用意しておくことをおすすめします。
注意点としては戦略と連動したツールの準備をすることです。
例えばSEOでアクセスの獲得を狙う場合にはSEOに強い構造のサイト基盤を選ぶ必要があり、どれだけコンテンツを制作してもサイトが弱いため、効果が出ないといったケースもあります。
リソース確保
コンテンツマーケティングに必要な人員やリソースの確認が終われば、今度はその確保に向けて動いていきます。特に人員については、内製化できる範囲を明確に絞り込んでおきましょう。
社内に適当な人材がいない場合、特定の業務を外部へ委託するか、コンテンツマーケティングそのものを外注する方法があります。
コンテンツマーケティングを専門に扱うサービス会社もあるため、内製化が難しい場合は検討してみましょう。
自社にノウハウがなく、外注先から運用のコツを習得するというのも方法の一つです。
予算
最後に、上記のリソースをすべて確保した場合の予算を算出し、コンテンツの制作費や外注費などを調整します。
仮にコンテンツマーケティング専門会社へ外注した場合、記事制作のみだと月10万〜50万円前後、記事制作に加えてCMS設置やアクセス解析まで含む場合は月30~100万円ほどの費用がかかります。
社内のリソースを見直し、不足する箇所のみを外注することも可能です。
また、予算を組む際は、効果が出るまでの日数に注意しなければなりません。
たとえば検索エンジンを主軸にする場合、コンテンツが掲載されるまでに数週間から3ヶ月、上位表示を果たすまで半年〜1年近くかかるケースもあります。広告に比べて即効性が低いため、持続可能な予算設定を心がけるようにしましょう。
コンテンツマーケティング企画書・提案書例
ここまでお伝えした8つの要素を基に、具体的なコンテンツマーケティング企画例をご紹介します。
例に取り上げるのは、若い女性向けに転職エージェントサービスを提供する企業です。
昨今、同業他社が多数参入し、既存コンテンツのビッグキーワードでのアクセス数が減少しつつあるため、より具体的で価値のあるスモールキーワードでの集客を行い、アクセスアップを果たすことが目的です。
企画書や提案書を作成するとなれば、当然ですがそれを確認する人が存在します。
企業のマーケティング担当者が企画制作者だとすると上長や管理責任者が該当します。
彼らにとってはコンテンツマーケティングを実施することでどのような効果があるか、具体的にどのようなコンテンツを作るのかといった点が気になるため、資料ではそれを分かりやすく記載する必要があります。
そして、企画書や提案書をより具体的にするには、まずは今回ご紹介した8つの要素を取り入れることが重要です。
こちらの企画書では必要最低限の項目だけですが、目的や戦略に応じて各ビジネスに応じたより詳しいコンテンツマーケティングの具体的な企画書、提案書を作るようにしてください。
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