文字やイラストなどに動きや音を加えた映像をモーショングラフィックスと言います。
実写動画よりも安い費用で制作でき、なおかつ視聴者の印象に残りやすい映像に仕上がるため、最近では数多くの企業から注目が集まっています。
企業やブランドのイメージアップ、商品・サービスのプロモーションにもつなげやすいため、モーショングラフィックスを動画広告に活用することも可能です。
モーショングラフィックスを活用することで、動画広告で表現できる映像の幅が広がります。
今回は、そのモーショングラフィックス広告を活用する方法や、動画制作時に押さえておきたいポイントや事例について解説します。
モーショングラフィックス広告とは
モーショングラフィックスとは、文字やイラスト、ロゴなどの静止画に動きや音を加えて映像を表現する手法です。
そのモーショングラフィックスを利用した広告を、モーショングラフィックス広告と言います。
一般的に動画に使用される文字や図形、イラストなどの素材は静止画です。
そうした素材が自分から勝手に動き出すということはありません。
映像に動きがなければ表現が単調になり、動画の尺が長ければ長いほど視聴者を飽きさせてしまう恐れがあります。
一方のインフォグラフィックスは、文字や図形といった素材を自由に動かせます。
画面の中で各キャラクターが躍動するアニメのような映像表現ができるため、見ている人を飽きさせません。
普段は動かない素材が躍動することのインパクトが大きいこともあり、視聴者の印象に残りやすい動画を制作できます。
モーショングラフィックス動画広告のメリット
前述したようなモーショングラフィックスを広告に活用することで、主に以下のようなメリットが生まれます。
- メリット(1)汎用性が高い
- メリット(2)無形商材にも対応している
- メリット(3)検証や改善が行いやすい
- メリット(4)実写動画に比べてコストが低い
上記のように、広告を発信する事業者にとって利便性が高く、コストパフォーマンスに優れることが分かります。
モーショングラフィックスを適切に運用するため、それぞれのメリットをしっかりと理解しておきましょう。
メリット(1)汎用性が高い
モーショングラフィックスは実にさまざまな用途に応用できます。
モーショングラフィックスは、映像表現の幅が限りなく広いからです。
商品やサービスの紹介に複雑な説明を要する企業との相性も悪くありません。
動画広告を活用するシーンと言えば、商品やサービスを紹介する際やブランディング、複雑な製品のデモンストレーション、採用活動のための会社PRを行うケースなどが一般的です。
映像再現の幅が豊富なモーショングラフィックスであれば、こうしたさまざまな活用方法に対応します。
メリット(2)無形商材にも対応している
動画を広告として活用する際、無形商材だと映像表現が難しいケースも珍しくありません。
テレビや洗濯機といった有形商材とは異なり、実物というものが存在しないからです。
その反面、モーショングラフィックスは無形商材の映像表現にも容易に対応できます。
モーショングラフィックスは、制作者の頭の中で描いたイメージをそのまま映像に落とし込めるからです。
仮に「企業と求職者を結び付けるマッチングサービス」といった概念的なサービスであっても、動きのあるイラストや文字を組み合わせることで表現ができます。
メリット(3)検証や改善が行いやすい
モーショングラフィックスは柔軟性に優れる、というのが第3のメリットです。
イラストや文字といった素材を中心に映像表現を行うモーショングラフィックスは、広告制作後の検証や修正を行いやすいと言えます。
動画広告は、メディアに掲載すればそれで役目が終わるというものではありません。
広告入稿前後にABテストでシミュレーションを行ったり、出稿後にKPI(重要業績評価指標)を検証して内容を改善する必要があります。
一度の出稿で効果が出るのは珍しいため、何度も検証と改善を繰り返すことが重要だということです。
これが実写の場合だと、動画の内容を修正するには多大な労力とコストが発生します。
キャスティングの見直しや映像の撮り直しといった作業が必要になるためです。
一方のモーショングラフィックスなら、修正が必要な箇所のみ映像を調整すれば済みます。
文字やイラストのみで構成された動画だとキャスティングの見直しや映像の撮り直しも必要なく、より少ない労力とコストで改善を行えます。
メリット(4)実写動画に比べてコストが低い
モーショングラフィックスは実写動画と比較して、相対的に制作費用を抑えられます。
その理由は、両者の動画制作方法を見れば分かりやすいです。実写動画の場合は、撮影前にキャスティングの設定から必要人員の確保、撮影機材まで用意しなければなりません。
一方のモーショングラフィックスは、イラストや文章、ロゴといった素材さえあれば、グラフィックスソフトを使って好きな映像を作れます。
このように制作方法を見るとコストの差は歴然です。当然、キャスティングや撮影機材に莫大な予算がかかる実写動画より、モーショングラフィックスの制作費用のほうが安くなります。
あくまで目安ですが、映像制作会社に依頼した場合、実写動画とモーショングラフィックスの費用相場を以下で比較してみました。
動画の長さ | 実写動画 | モーショングラフィックス |
1分以下 | 20~50万円 | 10~30万円 |
1分超3分以下 | 50~200万円 | 30~100万円 |
3分超 | 200万円~ | 100万円~ |
モーショングラフィックスのほうがコストを抑えられることが分かります。
モーショングラフィックス、アニメーションの中でも動画の長さや、各種アドオンで料金が変わってきますので、以下のシミュレーターで料金を確認してください。
モーショングラフィックス制作は広告戦略に合わせて
モーショングラフィックスを広告として活用するには、動画制作時に押さえておきたいポイントをよく理解しておきましょう。
そのポイントは以下の3点に分かれます。
動画は広告の目的や戦略に合わせて制作する
制作する動画の内容は、広告の目的や戦略に合わせることが重要です。
広告の目的や戦略に合わない動画を制作してしまうと、事前に想定した広告の成果がほとんど得られなくなります。
以下はモーショングラフィックス広告を利用する目的の一例です。
- 顧客の課題と自社でできることを提示してWebサイトなどへのアクセスを増やす
- 商品やサービスの魅力を伝えて販売数や成約件数を増やす
- ブランディングによりブランドに対するイメージを向上させる
- キャンペーンの告知を行って自社に対する注目度を高める
- 採用動画で自社の魅力を伝え、より優秀な社員を獲得する
上記のような広告発信の目的と動画の内容にズレがないよう、動画制作時にテーマを絞り込みましょう。
たとえば、販売数や成約件数を増やしたい場合は、商品やサービスの特徴が分かりやすい動画や、デモンストレーションを行って視聴者がその製品の使い方を容易にイメージできるような内容が適します。
配信するプラットフォームの特徴に合わせる
広告を配信するプラットフォームの特徴もしっかりと理解しておきましょう。
プラットフォームとは、YouTubeやTikTokといった広告動画を配信する媒体です。
プラットフォームのことをよく理解するためには、まず以下表のような動画広告の種類を知っておく必要があります。
動画広告の種類 | 広告の表示方法 |
インストリーム広告 | すでに投稿された動画の中に広告を含める手法。 |
バンパー広告 | インストリーム広告のように動画の冒頭や映像の途中で広告が表示される。 |
インバナー広告 | 動画配信サイトの検索結果ページや、関連動画の上部などに表示される広告。 |
インリード広告 | Webページをスクロールしていると、文章と文章の間に自動的に動画が現れて広告が表示される。 |
動画広告が配信されるプラットフォームは、YouTubeやTikTokが代表的です。
YouTubeの特徴は、国内の月間ユーザー数が6,500万人を超え、幅広い年齢層に情報が届くことが挙げられます。
一方のTikTokは、動画の長さが短く気軽に視聴できることから、10~20代の若者によく利用されている点が特徴です。
YouTubeやTikTok以外にも、インリード広告の場合は、広告が掲載されるWebページ自体がプラットフォームとなります。
YouTubeやTikTokとは異なり、特定のWebページに記載されているコンテンツの内容に合わせて広告戦略を構築することが大切です。
その他SNSでもモーショングラフィックス広告の配信は可能ですので、各プラットフォームの特徴に合わせて動画を制作します。
動画広告の課金方式に合わせて動画の長さや内容を考える
広告動画の長さや内容は、動画広告の課金方式によっても大きく変わります。
課金方式に合わせて動画の長さや内容を適切に調整することで、広告の費用対効果をより高められます。
動画広告の課金方式には以下3つの種類があります。
CPV課金
CPV(Cost Per View)課金は、広告が再生される度に広告費が発生します。
その広告が再生されたかどうかを判断するには、広告が再生された秒数を基準にします。
仮に「動画広告の再生時間が30秒以上になると1再生とみなす」という条件が適用されている場合、視聴者が広告を30秒以上見ると広告費が発生し、30秒未満であれば費用はかかりません。
適用条件については広告を出稿するプラットフォームによって異なります。
広告が表示されても条件に該当しない場合はコストが発生しないため、気付けば予算を超えてしまっていた、というリスクを抑えやすいと言えるでしょう。
CPM課金
CPM(Cost Per Mille)課金は、広告表示回数(インプレッション数)1,000回ごとに広告費が発生します。
視聴者が広告をスキップできないバンパー広告や、プラットフォームの検索結果ページや関連動画上部に表示されるインバナー広告に採用されることがほとんどです。
CPV課金とは異なり、再生時間にかかわらずコストがかかるため、予算とインプレッション数を確認しながら広告の表示頻度を調整する必要があります。
CPC課金
CPC(Cost Per Click)課金は、広告がクリックされた時点で広告費が発生します。
動画広告の一つの目標は、あらかじめ用意しておいたランディングページやWebサイトへ視聴者を誘導することです。その広告の費用が再生数やインプレッション数で決まってしまうと、「動画を見た人がサイトにアクセスしてくれているのか」という判断がしづらくなります。
CPC課金の場合は、広告費が発生することはつまり広告がクリックされたということなので、「リンク先のページに誘導できた」という目標が達成された事実を容易に確認できます。
アクセスを獲得できれば次のアクションに期待が持てるため、コンバージョンにつながりやすい課金方式と言えるでしょう。
モーショングラフィックス広告の事例
最後に、モーショングラフィックスをプロモーションに活用している事例をご紹介します。
事例(1)トヨタ
上記はトヨタのコンパクトスポーツカー「C-HR」のプロモーション映像です。
「北斗の拳」などで知られる漫画家、原哲夫氏とコラボし、漫画とモーショングラフィックスをうまく活用しています。
映像のベースとなっているのは、実際に原氏が書き下ろした漫画です。
モーショングラフィックスの効果によって漫画の中のイラストやテキストが立体的に躍動しています。親しみやすさという漫画のメリットと、印象に残りやすいという動画の利点をうまく組み合わせている点が特徴です。
事例(2)AGC
世界最大手のガラスメーカーであるAGCは、企業のイメージキャラクター「AGCちゃん」の絵描き歌を公開しています。
短時間のプロモーション映像制作な同社ですが、ときにはこうしたユニークな動画で話題集めを行っています。
絵描き歌という、モーショングラフィックスとしては非常にシンプルな構成が特徴です。シンプルだからこそキャラクターの可愛さや親しみやすさが全面に現れます。
企業のイメージアップ用の動画としては最適な事例と言えるでしょう。
事例(3)Think with Google
Googleのあらゆる調査分析データを公開するサービス「Think with Google」のプロモーション映像です。
シンプルで分かりやすい文字やイラストを使い、モーショングラフィックスによって制作されました。内容はすべて英語ですが、簡単な単語や文が多く、言葉が分からない人でも映像を見ていると何となく内容が把握できるよう工夫を凝らしています。
青・赤・黄といったGoogleらしいはっきりとした色味を使い、印象にも残りやすいと言えます。
事例(4)STRIPE DEPARTMENT(ストライプデパートメント)
「STRIPE DEPARTMENT(ストライプデパートメント)」は、業界初のECデパートメントです。百貨店実店舗のようにオンライン上にモールがあり、そこでさまざまなECブランドショップが店を並べています。
オンライン上で便利に洋服を買えるだけではなく、プロのスタイリストがコーディネートを提案してくれます。
その独特の仕組みを紹介しているのが、上記のコンセプトムービーです。
もともとは平面な静止画をモーショングラフィックスによって立体化。
本物の百貨店のような奥行きのある映像を表現しています。動きのある映像によってコンセプトが伝わりやすいだけではなく、視聴者に強い印象を与えます。
事例(5)セブン銀行
コンビニで預金や出金の手続きができる「セブン銀行ATM」のプロモーション映像です。
セブンイレブンの店内にあるATMを、インフォグラフィックスによって動きを付けています。
ナレーションと組み合わせることで、ATMの機械が喋っているような感覚に陥ります。
無機質なATMという機械がどことなく愛おしくなってしまうという、アイデアに優れた事例の一つです。
モーショングラフィックス広告の制作は目的に合わせて
モーショングラフィックス広告の制作は配信するプラットフォームや課金方式に合わせる必要があります。
自社ビジネスの業種、業態によって最適な動画広告を制作しましょう。
動画制作、マーケティングに関してはぜひ弊社にお問い合わせください。