これまでのコンテンツマーケティングといえば、検索エンジンから流入した見込み顧客に対し、オウンドメディアやブログの記事を発信することが主流でした。
しかし、現在は情報の検索手段が多様化し、特に若者の間ではSNSによる情報収集が中心となりつつあります。
そのため、検索エンジンだけを主眼に置いたマーケティングは限界を迎えつつあり、同時にSNSを使った検索ユーザーにも目を向けることが必要です。
そこで今回は、コンテンツマーケティングにSNSを活用する方法や事例について解説します。
また、SNSは自社サイトと連携することで真の効果が発揮されるため、その考え方についてもご紹介します。
コンテンツマーケティングの概要
コンテンツマーケティングとは、ユーザーにとって価値のあるコンテンツを提供し、見込み顧客のニーズの育成や購買を通じて、最終的にはファンへと定着させるマーケティング手法を指します。
Webサイトへの流入から成約、そしてロイヤルカスタマー化までの経路に沿い、それぞれのチャネルに合ったコンテンツを提供することが大切です。
コンテンツマーケティングが生まれた背景
コンテンツマーケティングが脚光を浴びるようになった背景には、企業売り込み型の宣伝手法に限界が見え始めたことが一因です。
企業売り込み型の宣伝手法として、テレビCMのようなマス広告やバナーを使ったWeb広告が挙げられます。
こうした宣伝手法は消費者の潜在ニーズを引き起こすことには適しますが、昨今の時代風潮には似つかわしくありません。
近年の消費者は、自分の知りたい情報や商品を自ら探すようになったからです。
一方、コンテンツマーケティングは、消費者の検索ニーズに合ったコンテンツをオウンドメディアなどに用意しておく、受動的なマーケティング手法です。
時代が進むに連れてより能動的に情報を探すようになった消費者ニーズに合っており、その検索ニーズに対してピンポイントなコンテンツを発信することで、購買ニーズをかき立てることができます。
コンテンツマーケティングを成功に導くフレームワーク「AISAS」
消費者の購買活動のプロセスを定義付けした「AISAS」に則ることで、コンテンツマーケティングをより成功へと近付けられます。
AISASは、「Attention(注意)」から始まり、「Interest(関心)」、「Search(検索)」、「Action(購買)」、「Share(情報共有)」の5段階に分かれています。
これは1人の見込み顧客が商品の購買やリピーターになるまでの経路を表しますが、同じ見込み顧客でもそれぞれの段階でニーズが異なります。
そのため、各段階に応じたコンテンツをニーズに添って提供することで、スムーズに購買までのプロセスを構築できるのです。
たとえば、Attentionの段階では、消費者はまだ自社の商品を知りません。
まずはその商品を含めた大カテゴリーの中で情報を調べ、知識を付ける段階です。
「洗濯機の縦型とドラム式の違いって何?」という検索ニーズがあるとすれば、その違いを解説する記事や動画などを用意できるでしょう。
そして、ある程度の知識を付けた後は、さまざまな商品を見比べ比較・検討を行おうとします。
比較や検討を行うのはInterestの段階です。そこで、今度は自社商品を含めたさまざまな洗濯機の価格や機能を比較するコンテンツが作成できます。
上記のように、AISASの各段階で生じるニーズに応じて最適なコンテンツを提供することがコンテンツマーケティングを行ううえでのポイントです。
まずは検索ユーザーの潜在ニーズを探し出し、購入に至るプロセスに沿って適切なコンテンツを発信すると、成約までの流れがスムーズになります。
SNSとコンテンツマーケティングは相性が良い
ここまでお伝えした通り、コンテンツマーケティングは見込み顧客の検索ニーズに合致したコンテンツを提供する手法です。
ただ、ユーザーの検索方法は時代の移り変わりと共に変化し、従来までは常識とされた検索エンジン(GoogleやYahoo!など)を主眼に置いた取り組み方だけでは、検索ユーザーのアクセスを十分に吸収しきれません。
近年の情報検索手段として、新しくSNSが台頭し始めたからです。
以下の表は、1日にインターネットを利用する時間のうち、各行動にどのくらいの時間を費やすかを数値化したものです。
【平日】 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 |
メールを読む・書く | 16.0分 | 25.9分 | 45.3分 | 34.1分 | 45.8分 | 30.5分 |
ブログやWebサイトを見る・書く | 14.2分 | 28.8分 | 28.8分 | 22.9分 | 24.1分 | 12.1分 |
SNSを見る・書く | 64.1分 | 71.4分 | 35.3分 | 19.5分 | 23.9分 | 8.2分 |
動画投稿・共有サービスを見る | 74.2分 | 46.6分 | 30.6分 | 16.2分 | 12.2分 | 7.0分 |
VODを見る | 10.7分 | 9.5分 | 7.2分 | 3.6分 | 4.0分 | 1.5分 |
オンラインゲーム・ソーシャルゲームをする | 33.8分 | 29.8分 | 19.9分 | 11.2分 | 10.5分 | 2.2分 |
ネット通話をする | 9.2分 | 7.8分 | 2.2分 | 1.3分 | 0.9分 | 1.7分 |
【休日】 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 |
メールを読む・書く | 20.6分 | 20.5分 | 26.4分 | 19.3分 | 21.6分 | 25.3分 |
ブログやWebサイトを見る・書く | 12.2分 | 36.5分 | 23.8分 | 25.4分 | 27.7分 | 9.9分 |
SNSを見る・書く | 83.4分 | 81.1分 | 38.4分 | 19.5分 | 24.0分 | 9.1分 |
動画投稿・共有サービスを見る | 114.8分 | 69.0分 | 44.1分 | 19.5分 | 17.2分 | 8.9分 |
VODを見る | 13.2分 | 11.6分 | 10.4分 | 5.0分 | 5.9分 | 2.9分 |
オンラインゲーム・ソーシャルゲームをする | 58.1分 | 48.1分 | 28.5分 | 13.0分 | 18.3分 | 2.2分 |
ネット通話をする | 13.8分 | 10.7分 | 2.1分 | 0.6分 | 0.6分 | 1.3分 |
※参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000708015.pdfを基に筆者が作成
上記表の通り、1日のうちSNSを見たり投稿する時間は若い世代ほど多くなっています。
10代では平日64.1分、休日83.4分、20代は平日71.4分、休日が81.1分で、ブログやWebサイトを見る時間よりも圧倒的に多いことが分かります。
つまり、情報検索を行う媒体が検索エンジンだけではなく、SNSにも拡大しつつあるということです。
よって、昨今の検索ニーズを的確に捉えるには、SNSの活用も視野に入れる必要があります。
幸いにも、SNSとコンテンツマーケティングの相性は良好です。従来行ってきたオウンドメディアやブログに加え、SNSにも価値のあるコンテンツを用意しておくことで、検索ユーザーの幅広いニーズを的確に捉え、購買までの自然なプロセスを構築できます。
SNSを活用したコンテンツマーケティング事例
では、SNSを活用してどのようにコンテンツマーケティングを実施すれば良いのか、ここではその方法をさまざまな事例を基に解説していきます。
全世界の月間アクティブユーザー数は約23億8,000万人、世界最大規模のSNSです。
日本の月間アクティブユーザー数は約2,800万人で、国内では若年層よりも40代以降の高齢者層に人気が高くなっています。
原則的に実名登録を求められるため、twitterとは違いフォーマルな印象が特徴です。文章のほかにも写真が動画を使った情報発信ができ、総合的なコンテンツマーケティングを行えます。
高級ホテルや旅館の会員制宿泊予約サイト「Relux」は、Facebookをコンテンツマーケティングにうまく絡ませた施策を行っています。
Facebook上に投稿される情報は、主に高級ホテルや旅館の内装・外装の写真です。
いずれも目を奪うような美しい写真を掲載し、投稿ごとに数多くのフォロワーを獲得。
その写真が気に入ったフォロワーは、写真と共に掲載された宿泊プランの詳細ページへアクセスすることで、簡単に宿泊予約が行えます。
出典:https://www.facebook.com/rlx.jp/
上記のような施策のおかげで、Facebookページへの「いいね!」数は10万を超え、各投稿に対するシェア数は1,000以上にも及びます。同サイトへのアクセスのうち、約70%がFacebookを経由したもので、新規ユーザー獲得を支えるもっとも重要なマーケティングチャネルといっても過言ではありません。
参考:https://growthhackjapan.com/2014-03-31-loco-partners-ceo-shinozuka-discusses-the-growth-of-relux/
Instagramは、世界中に10億人もの月間アクティブユーザーがいる、現在急成長を遂げるSNSです。
日本でも月間アクティブユーザー数は3,000万人を超え、幅広い見込み顧客へアプローチができます。
もともと写真を中心に投稿できるSNSだけあり、ファッションや美容グッズなどの関連テーマを基に情報発信する10~30代の女性層がよく利用しています。
ただ、2018年6月より「IGTV」という縦長の動画投稿にも対応し、いまでは写真や動画を発信できる一大SNSとして注目を集めています。
Instagramにコンテンツマーケティングをうまく適合させたブランドが、料理のレシピ写真や動画を発信する「kurashiru(クラシル)」です。
kurashiruは、Instagram内で1分以内の短い動画レシピを公開。
Webサイトやスマホアプリで公開したレシピも含め、2017年にはレシピ動画の投稿数が世界一を記録しました。
また、Instagramにおいても200万人のフォロワー数を獲得し、料理分野において人気アカウントとして位置します。
それぞれのレシピ動画は非常にクオリティが高い点が特徴です。
料理の見た目が引き立つよう高精細な画質で撮影が行われており、視聴者に「この料理が作りたい」と思わせるさまざまな工夫が施されています。
上記の通り、Instagramは動画投稿にも対応したおかげで情報発信の幅が広がりました。
写真や動画のアーカイブを残しておけば、一大ブランドカタログを構築できます。
フォロワー数が増えるに従って投稿したコンテンツが拡散され、ブランドの認知や見込み顧客の獲得にもつながります。
いわずと知れた国内で高い人気を誇るSNSです。
国内の月間アクティブユーザー数は4,500万人を超え、日本で2番目に月間アクティブユーザー数の多いSNSとなります。
メインユーザーが10~20代の若い人が中心ということもあり、面白いネタや話題性のあるニュース、感情に訴えかけるツイートなどがシェア・拡散されやすい傾向です。また、丁寧すぎる機械的な言葉よりも、多少フランクで打ち解けやすい文章が好まれます。
上記のような傾向を的確に理解し、フォーマルとフランクの絶妙なバランスを取っているのが「シャープ株式会社」です。
太古の昔より、急に暑くなるとメーカーの窓口へエアコンの問い合わせが急増、電話と修理の待機列がヤバいことになります。それを回避するためにも、エアコンの試運転をどうかお願いします。だいたいどこのメーカーも試運転の方法は同じですので。 pic.twitter.com/pAw3QnqsGO
— SHARP シャープ株式会社 (@SHARP_JP) May 20, 2019
たとえば弊社の採用ページには、あいかわらずこんな美辞麗句で薄っぺらな言葉が並びます。こんな言葉でいまの弊社へ心が動くとは私だって思いません。ですが現実に働く中の人の実感として、これだけははっきり言えます。数年前よりずっとマシ。 pic.twitter.com/lFlRMoM0YX
— SHARP シャープ株式会社 (@SHARP_JP) June 26, 2017
上記のツイートを見て分かる通り、大企業の広報が発言する堅苦しい印象はなく、ややフランクで率直な意見を堂々と発信していることが分かります。
これまでの「大企業=硬い」という印象を拭い去り、親しみやすさをPRするイメージ戦略が見て取れます。
その反面、ユーザーに対する丁寧さも文言から伝わるため、単に文章をフランクに書き換えるだけでは不十分といえるでしょう。
シャープの事例のように、Twitterは既存ユーザーへのブランディングやブランドイメージの認知拡大という目的で利用する企業が珍しくありません。
リプライやリツイートなど、ユーザーとのコミュニケーションツールが整っているため、新規ユーザーの獲得よりも既存ユーザーの育成に役立ちます。
YouTube
Googleが提供する動画共有プラットフォームです。
アクセス数はGoogle検索に次いで世界第2位を誇り、プラットフォーム内では好みの動画を自由に検索できます。
国内の利用者数は6,200万人を超え、いまや無視できないSNSへと成長しました。
個人・企業を問わず、自由なタイミングで好きなジャンルの動画を投稿できます。
動画の投稿や管理は個別のチャンネルページから行い、そのチャンネルを気に入ったファンが登録者という形で可視化される点が特徴です。
つまり、1つの企業チャンネルとして認知度が高まることで、商品の購買や成約へとスムーズにつなげられることを意味します。
YouTubeにコンテンツマーケティングを活用して成功した事例に、全国的に学習塾をフランチャイズ展開する「武田塾」があります。
同塾は、2013年よりYouTubeチャンネルをマーケティングの主軸にし、受験時に役立つテクニックや情報、参考書の解説動画などのコンテンツを定期的に発信しています。
上の動画を見て分かるのが、従来のバラエティ番組や昨今流行している知識系の動画とはコンテンツの中身が一味違うということです。キャッチコピーは「授業をしない塾」。
それぞれの動画には内容を解説する講師が登場し、テンポ良く説明が行われるほか、ときにはお笑い芸人をゲストに呼んでユニークな笑い話と共に解説を行うケースもあります。
学習塾といえば真剣に勉強をする場所というイメージがあるものの、同塾はあえて面白みやユニーク性を前面に打ち出し、これまでの塾の印象を根底から覆そうとしています。
2021年3月1日時点のチャンネル登録者数は8.88万人。
総視聴回数はすでに9,800万回を超えます。
YouTubeというSNSを土台にコンテンツマーケティングを行った結果、武田塾を運営する株式会社A.verの売上は6倍にも高まったそうです。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO66198330T11C20A1H56A00/
TikTok
2016年のサービス開始以来、わずか2年後の2018年には世界中で5億人もの利用者を獲得したSNSです。
YouTubeのように誰でも気軽に動画を投稿できる共有サイトですが、TikTokの場合は15秒ほどのショートムービーが中心という特徴があります。また、TikTokはアプリにプリインストールされている楽曲に合わせて動画を撮影するだけで済み、YouTubeよりも気軽に投稿できることから、10~20代の若年層に人気です。
いまやTikTokを活用したマーケティングが数多くの企業に利用されていますが、コンテンツの内容はダンスが中心となっています。たとえば、サントリーが発信した「ピーカーダンス」は有名です。
ピーカーダンスは、アイドルグループNMB48の人気曲「ピーク」に使われている振り付けを、「サントリー南アルプスPEAKER ビターエナジー」の商品PR用にオリジナル化したダンスです。
実際の振り付けは、NMB48のグループ内ユニットQueentetが踊っています。
単にオリジナルダンスを披露して商品の注目度を高めるのではなく、ほかにもさまざまな施策が行われている点が特徴です。
たとえば、ユーザーが投稿したピーカーダンス動画のコンテストを独自に実施したり、入賞した動画を公式Webサイト上に公開するなど、話題性に長けるコンテンツといえるでしょう。
上記のような視聴者参加型のコンテンツを発信しやすいのがTikTokというプラットフォームです。
数多くの若者が動画を視聴することにより、翌日学校に行ったときに友達同士で情報共有が行われる可能性が高くなります。
さらに、注目度の高いダンスなどは、学校の文化祭でも採用されるかもしれません。
その動画を基に企業やブランドの認知度が高まると、商品やサービスの売上増やロイヤリティの向上、Webサイトへの流入増といった効果が期待できます。
@horoyoi_suntory ほろよい。大人になっても好きな味。みんなも試してみて!
※URL:TikTok(horoyoi_suntory)
SNSコンテンツマーケティングと自社サイトの連携
コンテンツマーケティングにSNSを活用する場合、チャンネル登録者数やアクセス数を増やすだけでは十分な効果は発揮できません。
なぜなら、商品やサービスの販売ページは、SNSページやチャンネルとは別の場所に用意されていることが多いからです。
そのため、いくらSNSへ多くのユーザーを集客しても、SNSと自社サイト、またはSNSと販売ページのつながりが薄いと購買行動には作用しません。
よって必ずSNSから販売ページなどへの導線が必要です。
たとえば、先ほどご紹介したサントリーのピーカーダンスでは、TikTokというSNSから自社Webサイトへ自然にユーザーが流入する仕組みが作られています。
「ピーカーダンスを自分でも踊りたい」というユーザーは、自分で撮影したダンス動画をTikTok上に投稿できます。すると、ダンスを踊るQueentet自身が審査を行ってくれ、入賞した動画は公式Webサイト上に掲載されます。
ピーカーダンスを気に入ったほかのユーザーにとっても入賞動画は気になるため、おのずと公式Webサイトにも人が集まる仕組みです。
また、ユーザーが公式Webサイトへ流入すれば、今度はサイト内の記事や動画といったコンテンツにも注目が集まります。最終的にはそのコンテンツによってニーズの育成やブランドイメージの認知、販売促進を行うことで、より自然な販売経路を構築できるのです。
様々なマーケティング手法を混ぜ合わせて、成果を出していくためにはデータを取得して分析していくことが最も大切です。
インターネット広告、検索エンジンコンテンツマーケティング、SNSと様々な流入を計測して、各施策の効果を検証しながら目的達成のためのリソースの配分をしていく必要があります。
あらゆる施策を始める前にそういった自社サイトを含めて実際に利益に繋がる部分で、効果があるのかの検証ができるような体制を整えておくことが重要です。
弊社では企業のコンテンツマーケティングを支援しています。
コンテンツマーケティングに興味のある企業はぜひお問い合わせください。