動画マーケティングと言えば、BtoCにおける販売促進やブランディングなどに活用されるイメージがあります。
しかし、動画には情報を分かりやすく説明できるメリットがあり、むしろ複雑な製品やサービスを扱うBtoB企業のほうが、動画との相性は良好だと言える場合も多くあります。
今回は、BtoB動画制作の考え方や制作方法について解説します。
BtoB動画ならではのメリットや活用方法を理解し、動画の企画、制作を自社に合わせてうまく行えるようになります。
企業で活用が進む動画マーケティング
マーケティングや広告に動画を活用する企業が増えています。株式会社サイカが2019年に実施した「企業の広告宣伝担当者200人超に聞いた 動画広告の活用実態アンケート調査」によると、過去1年間で動画広告の投資割合が増えた企業は全体の42.1%にも及びます。
出典:https://www.atpress.ne.jp/news/184468
「割合が増加した」と「前年と同程度」のポイントの合計は79.5%です。つまり、現在は8割以上の企業が動画広告を活用していると言えるでしょう。
また、BtoB企業の場合でも動画マーケティングの重要性は変わりません。
営業や商談、プレゼンなど、顧客企業と直接対面する機会の多いBtoB企業ですが、それだけに動画が顧客の目に触れる機会は多くなります。
商品紹介やデモンストレーション、ブランディングなどの動画を的確なタイミングで発信すれば、顧客の意思決定をサポートできるでしょう。
BtoBの動画制作のポイント
BtoB動画を制作するには、動画制作会社に依頼する方法があります。
制作会社に依頼すると、制作方向のヒアリングから撮影、編集まですべての工程を担ってくれます。
ただ、制作会社から提案された企画を承認するのは発注者自身です。
そのため、動画制作を発注する企業も動画制作のポイントを押さえておくべきでしょう。
ポイントを押さえておくことで、よりイメージに近い動画が完成しやすくなります。
そこで、ここではBtoB動画制作のポイントを解説していきます。
ロジカルに分かりやすく伝える
制作する動画の内容は、単に伝えたい情報を羅列するだけでは不十分です。
事前に動画の尺を決め、その長さに応じたストーリー性のある構成を考えるべきでしょう。
仮に構成がまとまっていなければ、単調な動画になって視聴者を飽きさせてしまうからです。
特に製品の仕様や事業内容が複雑なBtoB企業は、ロジカルに分かりやすく情報を伝える必要があります。
たとえばサービス紹介動画の場合、サービスのメリットを羅列するだけでも動画は完成します。
しかし、それを見た視聴者は、「だから何?」という感想を抱いてしまうでしょう。これでは動画視聴後のアクションにはつながりません。
そこで動画にストーリー性を加えてみます。ストーリーを構成するには起承転結のフォーマットが便利で、サービス紹介動画なら以下のように制作することができます。
構成の流れ | サービス紹介の例 |
起 | 視聴者が現在困っている悩みを取り上げる |
承 | 自社サービスのメリットや魅力を訴求する |
転 | 導入前の注意点を説明して潜在ニーズを満たす |
結 | メリットを踏まえ、サービスを導入するとどのように悩みが解決するかをイメージで伝える |
仮に視聴者の悩みに自社サービスのメリットがピンポイントに刺さると、視聴者は問題が解決した後の姿をイメージできます。
視聴者の悩みを正確に捉えるほど、より相手の購買意欲をかき立てることが可能です。
顧客の利用シーンを想定しておく
BtoBサービスの顧客となる企業は、仕入から売上までに複数のプロセスを中継します。
自社で販売する製品やサービスは、そのプロセスの特定箇所で利用されるため、顧客の利用シーンを想定しておくことが大切です。
たとえば提供するサービスがオフィスで利用するものなのか、それとも現場向きのサービスなのか、映像で具体的に表現しておく必要があります。
顧客が想定する利用シーンとのミスマッチが発生すると、サービス本来の強みが発揮できない恐れがあるからです。
動画視聴後のユーザーの行動を意識する
BtoB動画を制作するときは、必ず視聴後のアクションを想定しておきましょう。
たとえば、視聴後にリンクをクリックして商品ページにアクセスしてほしいのか、それとも社内のプレゼン用に動画を活用してほしいのかにより、情報の訴求方法は大きく異なります。
上記のような動画視聴後の訴求を、「CTA(Call To Action)」と呼びます。
CTAとは、ユーザーがコンテンツを見た後にアクションをしてもらえるよう、行動喚起を行うことです。
動画マーケティングにおける代表的なCTAには、動画の内部や近くの場所にリンクボタンを設置する方法があります。
分かりやすい箇所にアクションを促すボタンを設定しておくことで、コンバージョンへの経路をスムーズにする仕組みです。
また、動画では映像や言葉でCTAを行うこともできます。
よくテレビCMでは、「続きが気になる人は○○で検索」という訴求を耳にしますが、言葉でCTAを行う代表的な事例と言えるでしょう。
動画自ら営業をするような運用を行う
動画を制作した後の運用方法も重要なポイントです。特に動画というコンテンツは、運用方法次第で永続的な情報発信が可能になります。
たとえば、公開した動画を自社サイトのトップページに貼り付けておいたとしましょう。
動画の内容が自社のイメージを訴求するブランディング動画であれば、サイトを訪れた数多くの見込み顧客へ良質な企業イメージを伝えられます。
また、製品の詳しい仕様や使い方を解説するデモンストレーション動画を、メールに添付して顧客に送信したとします。
すると、顧客は社内のプレゼンにて、その動画を活用する可能性が高くなります。
動画の内容が具体的で分かりやすいほど、自社製品やサービスの特徴が顧客企業に広まるわけです。
上記2点の事例には、動画そのものが営業を行ってくれるという点で共通します。
営業やマーケティング、販売促進などの業務を効率化できるということです。
運用方法によって動画の内容も変わってくるため、制作前に活用シーンを考えておきましょう。
ファン育成にも動画を有効活用する
BtoB企業の売上を向上させるには、何もセールストークにばかり意識を傾けていればよいというものではありません。
一度購買を決定した顧客のロイヤリティを高め、ファンへと育成することが重要なポイントとなります。
そして、ファン育成にも動画マーケティングは有効です。
ファン育成に動画を活用するには、視聴者を引き付けるような構成上の仕掛けがいります。
たとえば自社工場の最新設備を映像で紹介するとします。
しかし、単に設備の優れたポイントのみを説明していたのでは、自社でその設備を扱っている優位性が伝わりません。
そこで自社で最新設備を利用することで、エンドユーザーにとってどのようなメリットがあるのかを解説すると、「この企業は最終的な消費者のことも考えている」という信頼が生まれます。
つまり動画は、見せ方一つで視聴者の受け取り方が大きく異なるということです。
視聴者に見てよかったと感じてもらう動画を制作することで、顧客からの信頼とロイヤリティを獲得することができます。
BtoB企業が動画制作を行うメリット
BtoB企業が動画制作を行うメリットは様々ですが、以下の要素に分けて解説します。
- BtoB企業のマーケティングと動画は相性がよい
- トークスキルに依存しない情報発信ができる
- BtoB営業の効率が高まる
- 購買プロセスでWebを活用する企業が増えている
- 顧客の意思決定プロセスが容易になる
文章や画像よりも正確な情報を伝えられるのが動画のメリットです。
ターゲットの属性が消費者であれ企業であれ、情報収集を行う対象者は一人の人間であるという点には変わりがないため、BtoB企業においてもその恩恵を受けられます。
上記5つのメリットについて、以下で詳しく解説をしていきます。
BtoB企業のマーケティングと動画は相性がよい
BtoC企業と比較したときのBtoB企業の課題には、製品の仕様や事業内容が複雑で伝えるのが難しいという点が挙げられます。
そのため、Webサイトで情報を発信した場合、膨大な文章量を必要とすることが難点です。
文章が長くなるほど、読者はすべての情報を読み終わる前に疲れを感じてしまいます。
一方、動画であれば、膨大な情報を取得するユーザーのストレスを軽減できます。
また、そもそも動画には、文章よりもさらに多くの情報量を含められます。米国のリサーチ会社Forrester Researchの調査によると、1分間の動画に含められる情報量は180万語にも及びます。Webサイトであれば数十ページにも及ぶ情報が、動画だとわずか1分の時間で済むのです
動画には上記のようなメリットがあることから、説明が難しいBtoB企業のサービス紹介や事業紹介に最適と言えるでしょう。
トークスキルに依存しない情報発信ができる
BtoB動画は顧客との商談時にも活用できます。
普段から行っている商品説明やデモンストレーションなどを動画化しておくと、顧客にはタブレットやノートPCに保存した映像を見せるだけで済みます。
動画にはテキストを使った解説やナレーションを含められるため、動画そのものが営業マンに変貌すると言っても過言ではありません。
動画を見ることで製品やサービスをよりよく理解している人の割合は90%を超えており、かつ、営業担当のトークスキルに依存せず、常に最適な営業トークを繰り広げることが可能だということです。
BtoB営業の効率が高まる
営業時に動画を提示することで、営業効率が飛躍的に高まる点も見逃せません。
商品やサービスについて口頭で説明するよりも、短時間でより多くの情報を伝えられるのが動画のメリットです。
さらにインフォグラフィックス(情報説明を補足するテキストやイラスト)やナレーションを活用すると、視聴者の理解促進へとつながります。
その結果、情報説明の時間を短縮できます。
短縮した時間をヒアリングや顧客とのコミュニケーションに活用することで、商談時間を有効に活用できるでしょう。
また、オンライン商談にも動画が便利です。
たとえば商談前にメールで説明動画を送付しておくと、顧客はある程度の知識を持った状態で商談に臨めるため、商談そのものの時間を短縮でき、かつ、受注率も向上するでしょう。
購買プロセスでWebを活用する企業が増えている
BtoB企業の顧客は主に、3つのプロセスを経て購買へと至ります。
すなわち「製品の認知」から「リストアップ(一次選定)」、「詳細調査(二次選定)」へとつながる流れです。
株式会社メディックスの調査では、BtoB製品(IT系)の購買プロセスにWebが積極的に活用されていることが明らかになりました。各プロセスにおける主な情報収集源は以下の通りです。
情報収集源 | 製品の認知 | リストアップ | 詳細調査 |
検索エンジン | 55.1% | 40.3% | 30.5% |
IT系Webメディア | 37.8% | 31.9% | 23.2% |
ビジネス系Webメディア | 35.4% | 26.9% | 19.8% |
参考:https://webbu.jp/btobsearch-4213
BtoB向け製品やサービスの選定にいたるまでの情報収集には、上位のほとんどがWebツールとなっています。特に、検索エンジンの情報をもとに選定を行うケースがほとんどです。
もちろん検索エンジンでは、自社が用意した記事コンテンツが表示される可能性があります。
その記事に動画を掲載しておけば、文章の情報を映像で補完でき、読者の理解度をより高めることが可能です。
また、Webページへの動画の掲載は間接的なSEO対策にも役立ちます。
単なる文章のみのWebページより、文章と動画が掲載されたWebページのほうが、ユーザーの滞在時間が伸びやすいからです。よって自社でブログやメディアを展開している場合、動画による情報発信は必須と言えるでしょう。
顧客の意思決定プロセスが容易になる
消費者個人の意思が購買決定に反映されるBtoCとは異なり、BtoBでは複数のプロセスを経て意思決定がなされます。
一般的には、窓口となる現場担当者を経た後、その上長や管理責任者の承認を必要とします。さらに責任者の承認を得るため、現場担当者によるプレゼンが行われるケースも珍しくありません。
仮にプレゼン用の動画があれば、この意思決定プロセスがスムーズに進展することでしょう。
そのため、顧客企業の各担当者へ、事前に動画を渡しておくのも方法の一つです。
彼らが導入を検討するサービスのメリットや特徴を伝える動画があれば、担当者のプレゼン用資料として活用できるかもしれないからです。
意思決定プロセスが容易になることで競合他社よりも優位性が高まり、受注が決定しやすくなります。
BtoB動画の企画書(制作前の準備)
BtoB動画を制作する際に不可欠な要素となってくるのが、企画書です。
企画書とは、動画を制作する目的や運用方法、ターゲットなどをまとめた書類を指します。
動画を制作するときはチームのプロジェクト単位で作業を進めることも多いなか、企画書があると動画の内容をメンバー間で共有する際に便利です。
また、動画制作会社に詳細な意図を伝える役目もあるため、外注の場合にも企画書は必須と言えます。
ここでは、上記の動画制作のポイントやメリットを踏まえてBtoB動画の企画書を作る際のポイントを解説します。
動画制作の目的を明確にする
動画制作でもっとも重要な要素は「目的」です。
目的がなければメッセージや意図がぼやけ、結局何が言いたいのかが分かりづらい動画となってしまいます。
メッセージが不明瞭だとコンバージョンにも結び付かないでしょう。
また、目的を決める際には具体的な内容を考案することがポイントです。
たとえば「ECサイトの売上を30%アップする」や、「ランディングページからの資料請求回数を1.5倍に高める」など、具体的な数値を盛り込むとより分かりやすくなります。
ターゲットとペルソナを設定する
次に、「どのような人に動画を見てもらいたいのか」というターゲットを設定していきます。
ただし、「20代男性」といった抽象的なターゲティングではメッセージがあいまいな動画になってしまうため、より具体化したペルソナが必須です。
ペルソナとは、ターゲットの属性をより詳細に分解したターゲティング方法です。
たとえば年齢や性別のほかにも、居住地や家族構成、職業、年収、生活スタイルなどの要素を考えていきます。さらに関心事や価値観なども考案しておくと、ターゲットの悩みや不安に応じて適切な動画コンテンツを提供できます。
活用シーンを想定しておく
活用シーンとは、「どのような環境で動画を運用するのか」という運用方法です。
幸いにも公開した動画は、YouTubeの埋め込みコードやURLなどを貼り付けるだけで、コーポレートサイトやSNS、メールなどに活用できます。
そのため、「商品の詳しい使い方を説明する動画なのでECサイトに貼り付けて情報を補完する」といったように、動画の内容と合わせて活用シーンを決めるとよいでしょう。
また、たとえばSNSに掲載する場合でも、各プラットフォームによってユーザー層の特徴が異なります。
あらかじめペルソナで趣味や関心なども想定しておき、ターゲティングに合わせたプラットフォームを選ぶ必要があります。
BtoB動画を制作するにはまず参考動画探しから
自社で初めて動画を制作する場合には、まず参考動画を探すことから始めてみましょう。
あらかじめ参考動画を用意しておくと以下のようなメリットがあります。
- 参考動画があると企画制作を行いやすい
- 動画制作費を削減できることも
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
参考動画があると企画制作を行いやすい
初めて動画制作を行う企業を悩ませるのが企画制作です。
動画の企画は制作会社から提案してもらうこともできますが、発注者側である程度の骨組みを作っておく必要があります。
なぜなら、クライアントへのヒアリングだけで動画の完成形をイメージするのは困難だからです。
企画制作をする際、役に立つのが参考動画です。
これから制作する動画のイメージに近い参考動画を見つけておけば、その動画の構成やメリットの打ち出し方、CTAの方法といった具体策が浮かびやすくなります。
できるだけ自社に近い業界や動画の種類に合わせて参考動画を探すとよいでしょう。
動画制作費を削減できることも
参考動画は企画を練るとき以外に、制作会社へ依頼する際にも役立ちます。
たとえば、「このような動画のイメージに仕上げてほしい」と、制作会社とのヒアリング時に伝えることができます。
制作会社にとっては完成形をイメージしやすくなり、ヒアリングや企画制作の効率化にもつながるでしょう。
工程の削減に結び付けば、最終的な制作費を削減できるかもしれません。
上記のように参考動画を探しておくと、発注者側と受注者側の双方にメリットがあります。
BtoB企業の参考動画に役立つ事例
最後に、BtoB企業の参考動画に役立つ事例をご紹介します。
事例(1)野村総合研究所
野村総合研究所のYouTube公式チャンネルでは、BtoB向けのさまざまな動画コンテンツが発信されており、参考動画を探す際に便利です。
なかでも、上記は同社が提供するDX(デジタルトランスフォーメーション)サービスのプロモーション動画となっています。
実写映像やアニメーションをふんだんに駆使し、非常に質の高い映像に仕上がっている点が特徴です。
この動画の内容を文章で伝えようとすると膨大な情報量になってしまいますが、動画だと約3分程度で見やすい尺におさまっています。
事例(2)デロイトトーマツ
営業用の動画として参考になるのが、デロイトトーマツが提供する「DeepICR」の紹介動画です。
DeepICRとは、AIの画像解析を駆使した、ビジネス書類をテキストに変換できるソフトです。難しい技術が活用されていることもあり、一言で特徴を説明するのは簡単ではありません。
しかし、アニメーションなどの技法と組み合わせ、約3分という短い時間で全容を解説しています。
BtoB動画の制作は事前の企画、制作、運用まで一気通貫で考えることが欠かせません。
弊社では企画、制作、運用までワンストップで提供が可能です。
是非一度お問い合わせください。