採用動画のなかでも制作方法が難しいのが、今回ご紹介する中途採用動画です。実際、「中途採用戦略をどのように落とし込めばよいのか」「中途採用動画ならではの制作方法が分からない」というケースも珍しくありません。
ターゲットである転職者に刺さるような動画を作ることができれば、入社後のミスマッチを減らすことだって可能になります。これは企業と転職者の双方にメリットがあるため、できるだけ制作のポイントを押さえておきたいところです。
そこで今回は、中途採用動画の事例やメリット、料金相場をお伝えしつつ、中途採用動画ならではの制作方法に至るまでを解説していきます。
中途採用動画のメリット
採用動画はターゲットごとに新卒・中途採用・アルバイト向けに活用ができ、一概に一括りにすることはできません。ターゲットが変わると動画の内容にも変化をもたせる必要があるからです。
また、中途採用動画には新卒やアルバイト向けの動画にはない独自のメリットがあります。
- 新卒採用動画に比べて競合が少ない
- 動画制作費を抑えられるケースが多い
- 必要な情報のみをピンポイントで訴求できる
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
新卒採用動画に比べて競合が少ない
現在は、採用活動の一環として採用動画を活用するケースが増えています。しかし、その大半は新卒求職者をターゲットとした新卒採用動画であり、中途採用動画の数は比較的少数です。
よって新卒採用動画に比べて中途採用動画のほうが競合が少なく、その分動画を露出できる機会が増えます。たとえば動画を広告として活用する場合には、入札額の抑制や上位表示の可能性が高まる効果が期待できるでしょう。
また、競合が少ないと他社との差別化要因になりやすい点もメリットです。求人票では伝えづらい情報を動画で補完し、求人情報に厚みを加えることができれば、自社に対する注目度を高めることができます。
動画制作費を抑えられるケースが多い
中途採用動画は、新卒やアルバイトの採用動画に比べて制作費を抑えやすいメリットがあります。
中途採用の場合、すでに業界の内情に詳しかったり、ある程度のスキルを保有しているケースも珍しくありません。そのため、新卒採用動画のように業界の知識や各職種の細かい紹介などを説明する必要がなく、動画時間をコンパクトにまとめられます。
動画の制作費は動画の尺に左右される部分が大きいため、時間を短くすることで大幅にコストが安くなる場合も多いのです。
また、中途採用には、採用までのプロセス簡略化や新人研修の省略などによるコスト削減効果があるため、制作費削減との相乗効果は非常に大きいと言えます。
必要な情報のみをピンポイントで訴求できる
社会経験と知識・技術のある中途求職者を採用する場合、新卒採用動画のように1から10まですべての情報を入れる必要はありません。これは動画時間を短くできるだけではなく、必要な情報訴求のみに絞れるというメリットも生み出します。
必要な情報とは、まさに求職者が求めている情報のことで、「求職者は転職の際にどのような情報を参考にしているのか」という点を知れば訴求すべき内容が見えてきます。
エンジャパンは、転職者400名に「転職活動の際に参考にする情報」について調査を行いました。すなわち、以下の表にまとめた内容がまさに求職者が求めている情報ということです。
テーマ | 参考にする上位3つの情報(割合) | ||
会社に関して | 事業・サービス内容 (70%) | 理念・ビジョン (53%) | 社風 (51%) |
仕事に関して | 仕事詳細 (82%) | 仕事のやりがい (61%) | キャリアステップ (38%) |
待遇・環境 | 給与・賞与 (81%) | 休日休暇 (63%) | 勤務地 (56%) |
参考:エンジャパン 人事のミカタ(https://partners.en-japan.com/special/old/150909/3/)
もちろんすべての転職者が上記の情報を参考にするとは限りません。しかし、割合が高いということは、それだけ転職者の多くが上記の情報を重視して転職活動を行っているということなので、動画で集中して訴求するとニーズにマッチする可能性が高くなります。
動画そのもののメリットも忘れずに
ここまで中途採用動画ならではのメリットをお伝えしてきましたが、文章や画像ではなく動画というコンテンツを活用することによって生まれるメリットもあります。動画そのもののメリットは以下の通りです。
- 文章や画像よりもはるかに多い情報量を発信できる
- ターゲットの記憶や印象に残りやすい
- WebサイトやSNSなどと併用すれば大きな相乗効果が生まれる
- 出演者の人柄や熱意が伝わりやすく、視聴者の感情に訴えかけられる
- 採用動画では、企業のありのままの姿や社内のリアルな雰囲気を伝えられる
上記のように、動画には文章や画像では得られないようなメリットをもたらしてくれます。すでにオウンドメディアやブログ、SNSなどをマーケティングや採用活動に活用している場合、動画を発信することで施策の効果がより高まることでしょう。
動画の活用方法と料金
次に、動画の活用方法と料金・費用相場について解説していきます。
中途採用動画の活用方法
さまざまなシーンで活用できるのも動画のメリットの一つであり、採用活動においては採用情報の露出機会が増えてエントリー率が向上したり、求職者の理解促進が進んで入社後のミスマッチを防いだりする効果が期待できます。
中途採用動画の主な活用方法は以下の通りです。
活用シーン | 活用方法 | メリット |
Webサイト | ・Webサイトの採用ページに掲載 ・インタビュー記事と動画の併用 ・複数のメディアへのリンク誘導 | すでに会社の存在を知っており、能動的に検索するユーザーに自社をアピールできる。自由にコンテンツページを制作できるため、動画との相乗効果が高い。 |
SNS | ・採用の特設アカウントで情報発信 ・タイムラインや固定投稿へ埋め込み ・反応を検証してコンテンツ改善 | ユーザーの口コミを活用して情報を拡散できる。友人同士で情報を共有してもらえれば多数の応募者を獲得できる。 |
求人サイト | ・求人票と共に採用動画を掲載 ・直接コンタクトによる動画の紹介 | 求人票で不足しがちな定性的な情報を補完しやすい。求人票の情報の厚みが増し、エントリー数の向上が期待できる。 |
会社説明会 | ・会社や事業紹介用の動画を配信 ・社員や仕事内容の紹介動画を配信 | 自社に興味のある転職者の企業に対する理解が深まりやすい。 |
動画共有サイト | ・公式アカウントから動画を配信 ・採用ページへのリンク誘導 ・公式アカウントの一大コンテンツ化 | 過去に配信した動画をすべて格納しておける。採用動画以外にもマーケティング用の動画も配信でき、企業の一大メディアを形成できる。 |
動画広告 | ・YouTubeなどの動画内広告を出稿 ・SNSで動画広告を掲載 | 自社のことをよく知らない潜在層にアプローチできる。求人媒体ではできない細かいターゲティングができるため、費用対効果が高まりやすい。 |
上記は一例となるので、動画を制作する前に社内でミーティングを行い、活用方法を決めておくとよいでしょう。すでに何らかの媒体を保有している場合、動画との相乗効果を考えて制作を進めていくことがポイントとなります。
中途採用動画の料金・費用相場
中途採用動画を制作会社へ外注に出した場合の料金は、動画の種類や長さ、撮影・編集方法、アドオン(追加工)などさまざまな要因で変化します。そのため、ここでは制作に必要な予算から、どのような動画が作れるかという参考表をご紹介します。
予算 | 制作できる動画例 | 目安となる動画の尺 |
30~60万円 | ・インタビュー動画(2~3人) ・会社紹介(アニメーション) | 1分以内 |
60~90万円 | ・インタビュー動画(4人以上) ・会社紹介(実写) ・ドキュメント風の動画 | 1~3分 |
100万円以上 | ・ドラマ仕立ての動画 ・CM風の動画 ・3DCG動画 | 30秒~10分以上 |
採用費に対して費用対効果を高めるために、あらかじめ制作を見積もっておくことが大切です。
こちらでは動画制作の料金シミュレーションが可能ですので活用してください。
動画制作お見積もりシミュレーション
それぞれの予算ごとに制作できる動画について解説していきます。
予算30~60万円のケース
制作できる動画例:
- インタビュー動画(2~3人)
- 会社紹介(アニメーション)
目安となる動画の尺:1分以内
制作方法によっては、30~60万円程度の金額で動画を作ることができます。
たとえば、映像に2~3人ほどを出演させるインタビュー動画は1日にまとめて撮影できることもあり、費用を安く抑えられます。会社や事業内容などを紹介する動画でも、キャスティングや撮影工程を省けるアニメーション動画なら、高額な費用は発生しづらいです。
ただし、動画の時間を1分以内におさめないと上記の予算を超えてしまう恐れがあるので注意してください。事前に伝えたいポイントを整理しておけば、短い動画でも効果的なPRが可能です。
予算60~90万円のケース
制作できる動画例:
- インタビュー動画(4人以上)
- 会社紹介(実写)
- ドキュメント風の動画
目安となる動画の尺:1~3分
インタビュー動画でも、出演者(インタビュイー)が多く撮影日数が増えると費用が高額になります。また、インタビュイーへの質問時間や編集時間が伸びることで、60~90万円の費用が必要なケースも珍しくありません。
実写映像を使って会社や事業内容の紹介動画を制作する場合、アニメーションとは異なりキャスティングと撮影工程が必要になるので価格が上昇します。社員の1日やプロジェクトチームなどの働き方に密着するドキュメント風の動画も、60~90万円ほどの予算を想定しておくとよいでしょう。
動画の長さは3分以内におさめることがポイントです。3分を超えると途端に制作費が高騰するため、コンパクトな内容におさめられるように企画を練っておきましょう。
予算100万円以上のケース
制作できる動画例:
- ドラマ仕立ての動画
- CM風の動画
- 3DCG動画
目安となる動画の尺:30秒~10分以上
本格的な動画を制作するには、100万円以上の予算を見ておかねばなりません。
本格的な動画とは、たとえば複数話のストーリーで構成されるドラマ仕立ての動画や、有名芸能人のブランド力でプロモーションするCM風の動画などです。また、3DCGを活用する場合は高度な編集力が求められるため、比較的制作費の安い会社紹介動画のような内容でも価格が一気に上昇します。
高額な費用がかかる代わりに動画の内容や長さを柔軟にアレンジでき、インパクトのある動画を制作できます。求職者の記憶や印象に残りやすい動画を作ることで、自社の認知拡大や印象アップなどにつながりやすい点がメリットです。
動画広告を運用する場合の費用や活用方法
制作した中途採用動画は、自社ホームページやブログ、SNSなどで活用する以外に、動画広告として情報を発信することもできます。想定するターゲットが自社のことを認知していない場合には、さまざまなプラットフォームに広告を掲載して潜在層からのアクセスを獲得できるでしょう。
動画広告の費用については、広告を掲載するプラットフォームによって異なります。動画広告の主なプラットフォームはYouTubeや大手SNSとなっており、料金体系は下表の通りです。
広告配信先 | 主な料金体系 |
YouTube | ・30秒以上の広告視聴によって料金発生(CPV課金) ・視聴者の広告クリックによって料金発生(CPC課金) |
・表示数1,000インプレッションに達すると料金発生(CPM課金) ・視聴者の広告クリックによって料金発生(CPC課金) | |
・3~6秒以上の広告視聴によって料金発生(CPV課金) ・動画広告がフルスクリーン表示されると料金発生(CPV課金) | |
・表示数1,000インプレッションに達すると料金発生(CPM課金) ・視聴者の広告クリックによって料金発生(CPC課金) |
特に中途採用動画の場合、新卒やアルバイト向けの採用動画よりも確実にコンバージョンを獲得しなければなりません。採用コストがかさみやすい中途採用では、1円の費用も無駄にはできないからです。
上記プラットフォームのなかで中途採用動画の掲載に向いているのはInstagramで、ユーザーがアクション(クリック)をしない限り料金が発生しないCPC課金を採用しており、コンバージョンに直結しない余計な費用を支払う必要がありません。
クリック単価の相場も最小40円ほどであり、比較的安くなっており、費用対効果が特に重要な中途採用動画に最適です。
中途採用動画の制作内容
ここでは、中途採用動画の企画を考える際に役立つ制作のポイントを解説していきます。新卒やアルバイト採用動画ではなく、中途採用動画ならではのポイントを理解していきましょう。
大前提は転職者のニーズに添ったコンテンツ制作
中途採用動画の制作では、大前提として転職者のニーズに添ったコンテンツを作ることが有効です。
同じ求職者でも社会経験の有無によって企業に求める条件が異なります。転職者のニーズを探るには、先ほどお伝えしたエンジャパンの調査データが役立つでしょう。
テーマ | 参考にする上位3つの情報(割合) | ||
会社に関して | 事業・サービス内容 (70%) | 理念・ビジョン (53%) | 社風 (51%) |
仕事に関して | 仕事詳細 (82%) | 仕事のやりがい (61%) | キャリアステップ (38%) |
待遇・環境 | 給与・賞与 (81%) | 休日休暇 (63%) | 勤務地 (56%) |
参考:エンジャパン 人事のミカタ(https://partners.en-japan.com/special/old/150909/3/)
採用したい人材のイメージを明確にする
ある程度の社会経験がある転職者は新卒の求職者とは異なり、仕事の進め方や考え方が過去の経験に影響されてしまうケースも珍しくありません。
たとえば自社特有の仕事の進め方を教えても、「私のやり方はこうだ」と頑なに拒否されてしまう場合もあるでしょう。自分の意思を貫き通すのは悪いことではありませんが、あまりにもマイペースに仕事を進められてしまうと採用のミスマッチに発展する恐れもあります。
給与水準の高い中途採用でミスマッチが発生してしまうと、再教育にかける時間がとりづらいので多大なコストを浪費してしまいます。
そこで中途採用動画では、採用したい人材イメージを明確に伝えるようにしましょう。その結果、イメージに合った応募者が集まりやすくなるため、上記のようなトラブルを防ぐことができます。
定着率が悪化しない情報を含める
転職者を採用するとき、課題になりがちなのが中途入社者の定着率です。中途入社者の定着率は意外にも低く、エンジャパンの調査では回答企業の4割が定着率が低いと答えており、3社に1社が「入社して半年以内に退職に至るケースが多い」と回答しています。
参考:エンジャパン(https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/16757.html)
中途入社者がすぐに会社を辞めてしまう理由は、上司との相性が悪かったり、期待したキャリアアップが望めないなどさまざまです。ただ、中途採用動画の内容によっては、以下のような情報を含めることで未然に定着率の低下を防げる可能性があります。
- 上司や先輩の人柄・人望・部下との接し方を紹介する
- 社内のリアルな雰囲気を伝える
- キャリアップにつながる制度や人事考課などを紹介する
- ターゲットの立場に近い社員に密着し、業務内容を細かく解説する
中途採用動画事例
最後に、中途採用動画を活用する企業の事例をご紹介します。
事例(1)ディップ
アルバイトや正社員の求人情報サイトを運営するディップの中途採用動画です。ターゲットをエンジニアに絞り込み、動画内では社員インタビューや施設紹介、コンセプトメッセージなどが紹介されています。
ディップにかかわるさまざまな情報を知ることができるにもかかわらず、動画の時間がわずか4分15秒におさまっている点がポイントです。それだけしっかりと訴求ポイントの絞り込みができているということでしょう。同社のように充実した施設を保有している場合には、施設紹介は非常に効果的な訴求ポイントとなります。
事例(2)サーバーワークス
クラウドインテグレーターであるサーバーワークスの中途採用動画です。本編は社員へのインタビューが中心となっており、技術部門マネージャーや特化案件開発に携わるメンバーなど立場の異なる人が複数登場します。
それぞれの社員に対して「普段どんな仕事をしているか」「どんな人と働いてみたいか」といった質問を投げかけることによって、これから先輩や上司になるであろう人の考え方や熱意、人柄などを理解することができます。フリーアドレスで仕事をする人も多く、社内の風通しのよさも伝わってきます。