動画の企画や構成を考える際、避けて通れない要素が「動画の長さ(尺)」です。
動画の長さは、短すぎるとコンテンツの内容が薄くなり、長すぎると視聴者を飽きさせるため、適切に調整するのは簡単ではありません。
ただ、結論から言えば、企業用動画様々なイベント等で利用する動画の長さは1分前後が最適であるケースは多くあります。
尺が約1分あると、幅広いコンテンツを導入でき、なおかつ気軽に視聴できるからです。
そこで今回は、1分動画の制作方法や費用、料金相場を解説します。
動画の長さによって企画や構成方法が異なるため、この記事でポイントを押さえていきましょう。
動画制作の構成と考え方
一概に企業用動画と言っても、尺の長さによって視聴者に与える影響は大きく異なります。
動画の尺は、主に「30秒以下」と「1分前後」、「3分以上」の3種類に分類できます。
尺の長さにより構成や企画の考え方も異なるため、動画制作時はまず「動画の長さ」から考えていきましょう。
ここでは、3種類の動画の尺ごとに構成や企画の考え方を解説していきます。
30秒以下の動画制作
短いからこそ気軽に動画を視聴できる
30秒以下の動画は、尺が短いからこそ気軽に視聴できるメリットがあります。
視聴者が気軽に視聴できるということは、それだけアクセスを集めやすいということです。
そのため、30秒以下の動画は、特に動画URLからコーポレートサイトなどにアクセスを集めたいときに役立ちます。
YouTubeやSNSで利用する動画広告も30秒以下ものが多くあります。
30秒以下の動画は「序・破・急」の構成が基本
30秒以下の動画は尺が短いため、起承転結の構成を盛り込むのは無理があります。
よって30秒以下の動画には、起承転結をより簡潔にした「序・破・急」の構成が最適だと言われています。
序破急とは、能や雅楽、浄瑠璃などによく採用される作品構成の基本理念です。
序と破と急でそれぞれストレートにテーマを打ち出せるため、起承転結に比べて構成がシンプルになります。
たとえば、序破急を活用した動画の構成は、以下のような流れが一般的です。
- 序:自分の将来に不安を抱いていませんか?
- 破:その不安を解消するなら、こんな副業はいかがでしょう?
- 急:無事に副業が見つかって悩みが解決しましたね!
上記のように、序の段階で視聴者の悩みを浮き彫りにし、破で提案を行います。
そして、最終の急の段階を経ることによって序で浮き彫りにした悩みが一転し、視聴者が幸せになる姿を想像させるという流れです。
起承転結で言えば、序は起、破は承、急は転と結にあたります。
30秒の尺に起承転結の構成は長すぎるため、同じ構成の流れで内容を簡潔にできる序破急が向いています。
30秒以下の動画は広告にも活用しやすい
30秒以下の動画は、動画広告として併用しやすい点もメリットの一つです。
YouTubeやSNS上で発信されている動画広告のほとんどはショートムービーになっているため、短い動画を作っておくと活用の幅が広がります。
ただし、30秒以下の動画は尺が短いので、単に自社の紹介映像を流していたのではコンバージョンには至りません。そこで次のポイントを意識するようにしましょう。
- 動画の先が気になるような構成を心がける
- 「ツカミ」と「オチ」を意識する
尺の短い動画では、伝えたいメッセージをすべて映像に落とし込むのは不可能です。
そのため、30秒以下の動画はあくまで多くの視聴者を引き寄せるために活用しましょう。
そこからほかの長尺動画やコンテンツにアクセスをつなげれば、人を引き寄せる役目を果たしたと言えます。
たとえば動画の最後に、「動画の続きが気になる人はこちら」などのアナウンスを入れる方法が有効です。
また、動画の「ツカミ」や「オチ」を意識して構成を行うことで、短い動画にもストーリー性が生まれます。
1分前後の動画制作
動画制作はバランスに秀でた1分前後の尺がおすすめ
自社コンテンツに適正な動画の長さが分からない場合、1分前後に設定しておくことも多いでしょう。
尺が短いので気軽に視聴でき、起承転結の構成も組みやすく、全体的なバランスに優れているからです。
また、1分間の動画はWebページ3600ページ分の情報量があると言われています。
つまり、企業情報やサービス紹介などの詳しい情報を伝えるには、1分程度の動画で十分であるケースも多くあります。
さらに1分前後の動画であれば、普段忙しい視聴者でも最後まで視聴してくれる可能性が高いと言えます。
1分前後の動画は三幕構成が基本
三幕構成とは、「オープニング」から「コンテンツ」、「エンディング」へとつながるストーリー構成のことです。
企業は仕様が複雑な製品やサービスを扱うことも多いため、1分前後の動画では尺が足りないケースも珍しくありません。
そのため、シンプルな脚本構成である三幕構成を覚えておくと役立ちます。
3つの幕の役割は次の通りです。
幕の種類 | 役割 |
オープニング | 企業動画においては簡単な挨拶や企業紹介を行う。1分前後と尺が短いため、オープニングの内容をシンプルにしたり、結論から先に伝えるのも方法の一つ。 |
コンテンツ | 1分前後の動画においてもっとも重要となる部分。 |
エンディング | コンテンツの完成形や結論を紹介する部分。 |
1分前後の動画で三幕構成をうまく活用しているのが、以下の「まなびポケット」です。
「すべての学びの入口に まなびポケット」というシンプルなオープニングから始まり、主要なサービスを紹介してコンテンツ部分へとつなげています。
そして最後に、「新しい学びの形を実現していませんか」というアナウンスで動画を締めています。
視聴者はもちろん、動画を見る際に三幕構成は意識していません。
しかし、三幕構成を意識して動画を制作すると、視聴者は自然と映像に引き込まれ、つい動画を最後まで視聴してしまうのです。
短い動画だからこそ「視聴しやすい仕組み」が欠かせない
動画の長さが短くなるほど、伝えたいメッセージを端的に表現しなければなりません。
つまり、短い動画には「視聴しやすい仕組み」が欠かせないということです。
先ほどお伝えした「まなびポケット」の事例では、視聴しやすい仕組みとしてモーショングラフィックスが活用されていました。
モーショングラフィックスとは、イラストやテキストなどの素材に動きや音を加える映像表現手法です。
本来は動かないはずのイラストやテキストが、アニメーション映像のように軽やかに動くため、単なるスライドショーよりも格段に内容を理解しやすくなります。
また、実写映像では必須のキャスティングが要らないため、動画制作費用を抑えられる点もメリットです。
3分以上の動画制作
動画が長くなるほど完全視聴率は低下
サービス紹介やプロモーション動画を制作する場合、動画の尺が1分前後では不足するケースもあります。たとえばコンテンツの内容がインタビューや製品デモンストレーションの場合、1分前後の長さでは内容を伝えきれません。
そこで動画の尺を3分以上に伸ばすと、より豊富なコンテンツを伝えることが可能です。
しかし、動画の尺が長くなるほど、視聴者が飽きを感じやすい点に注意しなければなりません。
さまざまな動画配信ツールを提供するWistia社は、「Wistia Video Analytics:Length Matters」という調査を行いました。
以下の図の通り、横軸に「動画の長さ」、縦軸に「完全視聴率(動画を最後まで見た視聴者の割合)」を示しています。
出典:Wistia Video Analytics:Length Matters(https://wistia.com/learn/marketing/longing-for-longform)
横軸が右に進むに連れ、動画の尺が長くなることを表しています。また、動画の尺が長くなるほど、縦軸の完全視聴率が下がっていることが分かります。
つまり、動画が長くなるほど、その動画を最後まで見る視聴者の数が少なくなるということです。
30秒~1分程度の動画に比べ、3分以上の動画は一定程度、完全視聴率が減っています。
豊富なコンテンツを紹介できる3分以上の動画ですが、尺が長すぎると視聴者が飽きやすい点には注意する必要があります。
一方で文章を読むよりも、動画をみる方を好む人が多いと言われており、詳しく伝えたいのであれば長い文章よりも長い動画の方が良い、とも考えられます。
これは動画を制作する目的にも関わるため、なんのために動画を制作するのかを考えて時間を調整しましょう。
3分以上の動画では起承転結の構成が基本
さまざまなコンテンツを含められる3分以上の動画には、起承転結の構成が最適です。
起承転結の構成を意識するとストーリー仕立ての動画になりやすいため、視聴者の関心や興味を引くことができます。
よって視聴者のロイヤリティやエンゲージメントを高める際に向いています。
動画における起承転結の役割は以下の通りです。
ストーリーの流れ | 役割 |
起 | ストーリーの始まりを意味する。この段階では、動画を制作した意図やきっかけ、動画を見て視聴者にどのようになってもらいたいのかといった内容を紹介する。 |
承 | ストーリーが展開する部分。 |
転 | 承の段階で提示した視聴者の悩みが、転の段階で解決。 |
結 | 実際に自社サービスや製品を使った後の視聴者の将来像を描く部分。 |
動画の尺が長いだけあり、起承転結の構成では複数の映像を効果的に配置しなければなりません。
そのため、撮影や編集にも技術が求められます。
もし動画撮影や編集のノウハウが不足している場合は、動画制作会社への依頼を検討してみましょう。
動画制作会社にはプロの制作スタッフが揃っているだけではなく、ヒアリングによる企画提案まで行ってくれます。
動画が長くなるほど企画も難しくなるため、プロの制作者に相談しながら進めていくことをおすすめします。
動画制作の費用相場(30秒・1分・3分以上)
動画制作において尺を意識する必要があるのは、動画の長さが制作費用にもかかわってくるからです。
動画制作会社に依頼した場合、動画の長さによって以下のように料金相場が異なります。
動画の長さ | 動画の種類 | 動画の品質 | 料金相場 |
30秒 | アニメーション | 低 | 10~35万円 |
高 | 15~50万円 | ||
実写動画 | 低 | 20~45万円 | |
高 | 30~60万円 | ||
3DCG | 低 | 80~100万円 | |
高 | 100~150万円 | ||
1分 | アニメーション | 低 | 40~55万円 |
高 | 40~70万円 | ||
実写動画 | 低 | 40~70万円 | |
高 | 50~100万円 | ||
3DCG | 低 | 100~150万円 | |
高 | 150~200万円 | ||
3分以上 | アニメーション | 低 | 40万円~ |
高 | 60万円~ | ||
実写動画 | 低 | 60万円~ | |
高 | 100万円~ | ||
3DCG | 低 | 150万円~ | |
高 | 200万円~ |
そのため、あらかじめ動画制作の予算を決めたうえで内容を考えていきましょう。
また、アニメーションや実写などの動画の種類や品質によっても料金が変わります。
制作費用はプランニングの段階で把握しておくべきですので、こちらの料金シミュレーションフォームで費用感を確認しましょう。
動画事例
最後に、1分前後の企業動画の事例をご紹介します。
事例(1)Payme(ペイミー)
「Payme」は、企業向けの給与即日払いシステム導入サービスです。
サービスを導入した企業は従業員の要望に添って給料日以外の配給ができるため、社内の福利厚生を充実させることができます。
上記は、Paymeのサービスを1分程度で紹介したプロモーション動画です。
日本では、給与即日払いサービスに対する認知度がまだ高くありません。
そのような時代背景の中、短い動画で端的にサービス内容を紹介できるのは、情報を伝えやすいモーショングラフィックスを活用しているからでしょう。
ナレーションに沿って動きのあるイラストやテキストが現れるため、視聴者の理解が促進されます。
事例(2)大塚製薬
上記は、大塚製薬が提供する「カロリーメイトゼリー」の商品紹介動画です。
同製品の情報は公式サイトにも掲載されていますが、情報量が多いため、ページを何度もスクロールしなければなりません。
一方、動画であれば、公式サイトに記載されているような内容を1分程度で伝えられます。
Paymeと同様、大塚製薬の動画にもモーショングラフィックスが活用されています。
動きのあるイラストやテキストにより、商品のメリットや魅力が視覚的に伝わってきます。
事例(3)Apple(アップル)
上記は、2013年に発売したプレゼンテーションソフト「Keynote」を紹介する動画です。
あえて動画の尺を短くし、シンプルなキーフレーズのみで内容を解説しています。
余計な言葉を省くことで、Appleらしい洗練されたイメージが伝わってきます。
つまり、この動画はサービスの紹介だけではなく、ブランディングとしても成功しているということです。
1分前後の短い動画を活用するときは、ブランドのイメージ向上や認知度拡大などに目的をに絞ることも重要です。
動画の長さや構成は目的から逆算して最も効果的な方法を選ぶ必要があります。
弊社では企画から制作サービスまで提供可能です、動画の制作をご検討の方はぜひお問い合わせください。